第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 41 - ナジュが望んだもの
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 41 - ナジュが望んだもの
なのに、俺を引っ張ってきたことで、その均衡が崩壊してしまっている。
こんな状況で、想像ができないなんてことはない。
いくらでも、断言することができる。
この結末は、予想できた。
間違いなく。
もちろん、俺と同じ次元の住人として存在し続けていたナジュが、というわけではない。
ナジュの本体のことである。
「考えてなかった……なんて言っても、納得しないだろうね?」
ナジュは皮肉っぽい笑みを浮かべながら話してくる。
「もちろん」
俺は端的に答えておく。
「でも、それって半分は当たりなんだよね。なぜなら、一番の目的はあんたを、あたしの世界に連れてくることだったんだから」
裸の彫像のごとく立ちながら、俺の顔をじっと見つめてナジュはさり気なく言った。
なんの気負いもてらいもなく。
「俺を? あんたとは、一切接点はないと思うが?」
前世も含めて、俺にはナジュとの繋がりが見えてこない。
たとえその姿が記憶になくとも、一度記憶した気ならば間違いようがない。
ましてや、高次元の存在ならばなおさらだ。
フェイズ50以上でないと対応できない存在など、どれほど多くの異世界をめぐろうとそうそう出会えるものではない。
「やはりとは言わないよ。ただ、それでも寂しいもんだね」
ナジュから帰ってきた答えはそれだった。
この返答、一体どう解釈すべきなのか難しい所である。
「それは、俺の記憶の問題ということなのか?」
この期に及んで体裁を取り繕ったところでしかたないので、端的に聞いてみる。
すると。
「違う……違うよ。記憶というのは、時間に囚われている者が持つ特有のこだわりだろ? 過去も今も未来もあんたの掌の中にあるはずなんだ。その中に、あたしは居なかった……。あんたなら分かるはずだ、それが何を意味するのかということを」
ここまで言われて、俺は苦笑を浮かべるしかなかった。
それがどういうことなのかを理解することは出来る。概念としてだ。
だが、フェイズ50を超えてフェイズ・シフトを行わない限り、直接働きかけることは不可能である。
俺はしょせん、高次元の存在などではないのだから。
だが、ナジュはそのことも知った上で、話しかけてきている。
だとすれば、ナジュは俺が今を遥かに超えたレベルへと到達することが可能であることを知っているのだ。
その上で、俺の中にナジュが居なかったこと。
それを本気で哀しんでいるのだとしたなら、結論はもうひとつしかありえない。




