第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 39 - 道を作る
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 39 - 道を作る
これは、素粒子とかいうようなレベルではなく、過去も未来もありとあらゆる可能性そのものが消滅したのだ。
ゆえに、俺の欠片は存在しなくなった。
フェイズ51へとシフトした俺の感覚は、さらに高度な次元を捉えることが可能となる。
ここで、俺はナジュが打った次の手を認識することができた。
俺が認識していた一つ上の次元で空間同士がつながっている。
これでは、俺はどこにいくこともできない。
三次元空間でどの方向に向かおうが、元の場所に戻ってくることになる。
高次元方向を認識できなければ、なぜにそうなるのか理解することは不可能だ。
もっとも、認識したところで肉体が三次元空間移動能力しか有していないのでは、何をどうすることもできない。
たとえ転移魔法等を使おうが同じである。
魔法技術であっても、科学技術であっても、擬似的な高次元移動とは言えるが、あくまで擬似的なものであり自由に移動できるわけではない。意図的に閉ざされてしまえば、その空間からの離脱は不可能となる。
もちろんそれは俺も同じである。
だが、その状況を覆す方法はある。
とても単純な方法だ。
閉ざされている空間そのものをぶち壊せばいい。
自分で移動可能な道を作るのだ。
俺は、即実行する。
気を集中させ、それをさらに絞り込み両手から放つ。
三次元的には正面だが、放った気が向かう先は俺の感覚が捉えた方角だ。
つまり、五感で認識可能な空間では消失したように見える。
だが、向かった方向にある空間をぶち壊し、その影響はこの宇宙全体に影響を及ぼしていた。
数百万光年の距離と共に数ナノメートルにある場所。数億年の未来と過去。
時も場所もほぼ無秩序に見える空間に時空振動を生じさせ、その周囲にあるありとあらゆる物質を崩壊へと導く。
通常の生命体にとっては、なんら関連性が見えないだろうが、俺が気を放った方角からはすべて至近距離にある。
高次元から見みなければけっして認識することはできない。
この宇宙に多大な被害をもたらしたが、そのおかげで俺は移動不可能な状況を脱することが可能となる。
抜け道が出来上がったからだ。
もちろん、抜け出せる方向への移動は肉体的には不可能だ。
だが、気を使うことで可能となる。
向かう先を気で捉えている限り、移動できるかどうかなど関係ない。
俺は、すぐに移動を開始する。
感覚的にはその瞬間に、俺の眼の前にナジュがいた。




