第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 36 - 決戦の場
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 36 - 決戦の場
この後に及んで、破壊してしまってもナジュが苦情をいうことはないだろう。だが、逆に壊す必要もない。
俺が向かった先はコックピットを開いたまま放置してあるライジンである。
コックピットを開いたままの状態で、パネルを操作する。
すると、ライジンの背後に魔法陣が展開される。
異世界間を転移するための魔法陣であった。
こんなことが可能な人物は、この世界において一人しかいない。
やはり、チロは無事のようである。
転送する異世界への座標はもう定まっている。
眼の前の魔法陣をくぐり抜けるだけで、俺は目的の異世界へと行くことが可能だ。
非常に回りくどい手を使わざるを得ないのは、俺が自力で異世界間の移動をするために必要な、フェイズレベルである。つまり、50以上にシフトする必要があった。
フェイズ50以上のシフト時に発生した時空振は、50未満の時空振とは桁が違う。
どれほど細心の注意を払おうが、完全に抑えきることは不可能だ。
その時の衝撃波は宇宙全体に広がる。
あまりに強烈な時空振をうけて、いくつもの恒星や惑星がランダムに消滅してしまうことになるだろう。
最初に俺がフェイズ49の壁を破り、フェイズ50に到達したとき、実際そうなった。
なので、フェイズ50を超えるフェイズ・シフトはたやすくできることではない。
俺が自力で異世界間の移動をしない理由はそこにある。
魔法技術や科学技術を用いれば、星々の消滅を招かなくてすむのだから選択の余地はない。
というわけで、俺は通信システムを使いチロが遠隔地から作り出してくれた転移陣を通り抜ける。
その瞬間、俺は全方位からナジュの気を感じ取る。
姿を見ることが出来ないのは、三次元の感覚では捉えられないからだ。
気を探っても、チロ以外の気を感じない。
この宇宙には、生命が一切存在していないのだ。
俺が指定した通りであった。
このままだと、ナジュを見つけることすらできない。
遠慮なくいかせてもらおう。
俺は気を高めると、立て続けにフェイズ・シフトしていく。
そして、フェイズ49に達した時、少しタメを作りフェイズ50の壁をぶち破る。
強烈な時空振動が発生し、この宇宙全体を震わせる。
他の宇宙ならばいくつもの星が消滅し、とてつもない数の命が一瞬で失われたことだろう。
だが、この世界では考慮などする必要はない。




