第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 33 - ナジュという存在
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 33 - ナジュという存在
一つの問いかけに、質問内容は三つある。
一つ目は俺が気がついた理由、二つ目は俺がなぜ気が付かないふりをしたのか、最後はその上でナジュの思惑に付き合ったのかということ。
こんなに質問を畳み掛てくるのは、焦っていることを隠せないのか、それとも隠したくないのか。
まぁ、いずれにしても俺はかまわないが。
「英雄たちが一旦集められた理由は、主催者が英雄以外にいるのだと俺に思わせるため。つまり他の英雄は全員、そのために用意された囮なのではないかと俺は仮説を立てた。そして、俺の前に相棒を名乗りあんたが現れた。俺の仮説が正しければ、必然的にあんたがことを起こした主催者なのだということになる」
俺は、まずは一つ目の質問に答える。
話した内容以外にも端折っている部分はあるが、今の説明だけで十分なはずだ。
「なぜ、そのことをあたしに話さなかった? あんたは、そんなことをためらったりする男じゃないはずだよ」
それほど長い付き合いではないが、ナジュは十分俺のことを理解している様子だった。
「話しても仕方なかったからだ。これは、次の質問にも共通するが、今目の前にいるナジュという名の女は、存在全体の影に過ぎない。例えていうなら、小説家が生み出したキャラクターに近いかな。俺があの瞬間どんなに詰め寄ろうが、今話しているのと同様のことは話せなかったはずだ」
俺はそう言い切った。
実際に、ナジュはナジュとして普通に生まれて成長し、あの場にいたのだ。
だが高次元の存在にとっては、小説を書くようにナジュを生み出すことができる。
つまり、ナジュという個体は高次元の存在が意図するまでは自身が高次元の存在そのものなのだと、まったく認識することができない。
例えば小説を読んでいる人間がいるとする。彼、あるいは彼女は先のページをめくることで未来を知ることができる。そして、元のページをめくることでいつでも過去へと戻ることができるのだ。
だが、登場人物はそのページの内容に縛られている。
あの時点で、ナジュに何を言っても無駄というのは、そういう意味であった。
「そこまで分かってるの。それじゃ、なぜあたしが今ここに現れたのかも、分かってるね?」
いよいよ、ここからが本番だ。
ナジュが焦っているのだとしたら、その理由がこの質問にある。
そしてそれは、すべての決着へと導くための質問だった。




