第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 30 - 皇帝戦
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 30 - 皇帝戦
さっきから、まったく気の回復がすすまなくなっていた皇帝は、ゆっくりと戦いの構えをとる。
「そこまで分かっているのなら、応えてくれような? この戦いの結末は、二つしかないのだからな」
気が回復しないまま、殺気だけをみなぎらせて皇帝が俺に意思を伝えてくる。
皇帝の言う結末とは、俺か皇帝、いずれかの死だ。
そのこともまた、わざわざ伝える必要がないことであった。
叩きつけられるような殺気を浴びながら、俺は構えを取ることもせずに返答する。
「ことわる」
皇帝の言う結末は二つだが、望む結末は一つ。
もちろん、自分自身の死である。
この世界に存在しているかぎり、皇帝は死ぬことをゆるされない。
自分自身を超える相手に斃される以外は。
五百年にわたって、英雄たちを葬り続けてきたのも、自身を超える相手が現れるのを願い続けてのことだ。
皇帝はすべてを終わらせたがっている。
自分自身の人生に幕を下ろし、休みたいのだろう。
つまり、俺を自殺の道具に使おうとしているのだ。
俺は、そんなものに利用されるのはごめんだ。
だから、ことわった。
「悪いが、きさまの意思など関係ない。余と、きさまの実力は伯仲しておる。余を殺さぬかぎり、きさまが死ぬことになる。戦って余を殺すか、生き延びることをあきらめるか。選択肢は、このいずれかしかない。ならば、きさまにとって答えはひとつしかあるまい」
さすがに、五百年もの長きに渡って帝国と共和国という二つの国家を支配し続けてきた漢である。
これからのことも、読みきっている。
だが。
「それが、そうでもないのさ。確かに実力が伯仲してるのなら、その言葉は正しいだろう。もし仮に、実力差が大人と子供以上に開きがあるのなら、どんなにあがこうと戦いにはならない。子供を相手に手加減するなぞ造作もないことだからだ」
俺は淡々と事実を指摘してやる。
だが、それで皇帝が納得するとは思っていない。
「ふん。この期に及んで、何を言うかと思えばハッタリか? 貴様は強い。正直、余の予想をはるかに上回る強さだ。だが今の戦いは、きわどいせめぎあいだった。貴様がどんな隠し玉をもっていようと、大人と子供ほどの力の差はない」
皇帝は確信を持って言い切った。
もしろん、それは真実である。
フェイズ5の俺では、勝てはするが圧倒できるほどの力の差はない。
フェイズ・シフトという技は、相手の実力に合わせ常に限界ぎりぎりの戦いをすることができる。




