第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 29 - 暗闘
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 29 - 暗闘
なにしろ、俺自身がいきなり英雄呼ばわりされて連れてこられた当事者なのだ。いわゆる経験者は語るの世界である。
この辺りは、推測といっても確定情報に近い。
「ほう? それで?」
皇帝は俺の言葉に一切コメントを差し挟むことなく先を促してきた。
まだまだ不十分だというつもりなのだろう。
この対応で、気の回復を図るための時間稼ぎではなく、その本意が別にあるのだと俺は確信する。
時間稼ぎのためならば、話を促すより頻繁に横槍を入れたほうがいいに決まっている。
そういうことならば、俺の話の結論も若干修正が必要になってくる。
「ここから先は、すべて仮定に基づいた話になる。その前提で聞いて欲しい」
俺が告げると、皇帝は何も意思を伝えることをせずに黙って俺を見ている。
「あなたをこの宇宙に引き込んだ存在は、定期的に『英雄』を作り出し競わせた。その最終的な勝者があなたへのチャレンジャーとなり戦いを挑み破れた。もちろん、それはあなたの意思ではない。『英雄』を生み出し続ける存在が、戦いを望んだからだ。とはいっても、それが強制されたものであるとは思っていない。それは、あなたの意思でもあったからだ」
俺は今、憶測に近い推測を述べている。
これは、理論的な推理ではなく、感情に基ずく想像だ。
正解なのかどうなのかは、皇帝にしかわからない。
「それで終わりか?」
さらに、皇帝は聞いてくる。
その裏にあるのは、おそらく……。
「あなたは、期待している。俺に出会ったことで。銀色の戦士を使ったことで」
今の話しは、偽トルマンのことだ。
偽トルマンを出してきたのは、他の英雄を始末することが本意などではない。
それが目的ならば、クレアル海回廊での会戦で偽トルマンを出していればまとめて始末することができた。
今、このタイミングで偽トルマンを使った理由はひとつしかない。
俺に直接介入させるためだ。
偽トルマンを止めるだけの実力があるかどうか、それを試す意味もあったのだろう。
「どう試したというのだ?」
わずかばかりだが、楽しそうな意思が皇帝から伝わってくる。
「俺の力がどれほどのものなのか、それが知りたかったんだろう? あなたは自身の目的を達成するために、俺が使えるのかどうか確認する必要があった。それは、今までずっとあなたがかなえようとし続けてきたことだ。その結果、あなたは今此処にいる」
俺は意図的に肝心な言葉を伝えなかった。
だが、それで十分だろう。




