第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 22 - 転移
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 22 - 転移
冗談か本気なのかよく分からない返事をしてきたのはミルバだった。
「こちらは、一切問題ない」
一番最後に、短く事務的な答を返してきたのはゲイルだった。
言うまでもなく、この三人がひるんだりするようなことはない。
とは言え、この辺りのやりとりは礼儀だ。良くも悪くもやっておくべきことである。
「それでは行くぞ」
俺はライジンを加速させる。
タツギの限界性能を考慮して、最大加速ではないが、戦艦にくれべたら遥かに強烈なGがかかる。
「戦艦消失地点まで3秒」
AIによるカウントダウンが始まる。
「2、1、到達、今」
それは一瞬だった。
体感的にはなんの変化も感じられなかった。
だが、銀河間を移動する、超長距離転移は確実に起こっていた。
それを真っ先に知らせてきたのはAIだった。
悲鳴にも似たアラートという形で。
「警告! 外殻が高温のプラズマにより、融解を初めています。行動限界まで、あと60秒」
計器を確認するまでもなく、俺たちが真っ赤にプラズマ化した気体の中にいることは見ればわかる。
現在対ビーム兵器用の電磁フィールドが全開で展開されているために、かろうじて存在できているが、本来なら出現した瞬間に蒸発している。
「えっ? 何がおきてるんだい?」
さすがに深刻そうな声でミルバが聞いてきた。
「説明は後だ。すぐにハイパードライブに入る。フォーメーションを組んでくれ」
俺は編隊の後方に移動しながら、指示をだす。
すると、タツギ3機はみごとにハイパードライブのフォーメーション位置についた。
俺がその後ろについて、気を広げて通常空間と切り離した状態で、一瞬だけ加速を行う。
その一瞬だけで、周囲に存在していた高温のプラズマが消えていた。
正確には、俺たちの方が消えていたのだが、そこまでこだわる必要はないだろう。
「今の何だったんだ?」
コンラッドが聞いてくる。
俺は状況を説明しようとしたが、その前にゲイルが口を開く。
「俺たちが転移した先はあれだ。外周部だったおかげで生きているということだろう」
ゲイルがあれと表現した星は、全天スクリーンを覆い尽くさんばかりの巨大さで真っ赤に輝いている恒星だった。24光時ほどの距離があるはずなのに、この巨大さは凄まじい。
太陽系で比較してみれば、太陽が海王星軌道まで飲み込んでいるような状態である。
星の終焉を迎えようとしている恒星の姿がそこにある。
赤色巨星であった。
つまり、俺たちは赤色巨星の中に出現したことになる。




