第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 20 - 追尾
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 20 - 追尾
「問題ない」
ゲイルはまるで予測していたかのうように、間をおくことなく答えてきた。
「あの戦艦を追うつもりかい?」
ゲイルとは違って、興味津々といった感じでミルバが聞いてくる。
「その通り。と言っている間もなさそうだ。追うぞ」
なんと戦艦は、戦闘機部隊を回収することなく動き出した。
見捨てるつもりなのだろう。
ライジンは戦闘機形態のまま、タツギ編隊の後ろにつく。
ライジンが先にでたのでは、機動性の劣るタツギではフォーメーションを組めなくなる。
戦闘に立つのはゲイルの乗る壱号機。その後方の左右にミルバとコラッド。俺はその後ろ。
いわゆるダイヤモンド編隊というやつである。
動き始めた戦艦は最大戦速からすぐにハイパードライブへと移行する。
こちらもすぐにその後に続いた。
戦艦が今使っているのは、どの航宙図にも記載されていない航路である。
ただ、そんなことは最初から分かっていたことだ。
クレアル海の他にも航路があるのだとしたら、俺がみつけた航路以外にも航路が存在していなければ色々と説明がつかないことがある。
特に、ソーグ帝国とラートラ共和国の間の繋がりについてだ。
五百年もの長きに渡って国交が断絶していたのだとしたなら、科学レベルだけでなくシステムの互換性などとれるはずがないのだ。
それどころか、言語が通じなくなっても不思議ではない年数である。
それだけ考慮しても、誰かが意図的に双方の文明をつないでいたと考えるべきだろう。
そして、今からその正体がわかる。
戦艦がハイパードライブ航法に入ってから一時間ほど経ってからだ、いきなり通常航法へと移行する。
敵艦に乗り込んだ時こちらの航法システムをリンクさせてあったので、瞬時に対応してライジンとタツギ3機も通常航法へと移る。
「おい、みろよ。ありゃあなんだ?」
通常空間に現れて、真っ先に回線を使って話しかけてきたのはコラッドだった。
言われるまでもなく、俺もそれを見ている。
無数の星からの光が、奇妙な形に歪んで見えている。
まるで螺旋を描く回廊のような空間が、戦艦が向かう先に存在している。
「ワームホールの一種のようだ。ただ、少し様子がおかしい」
ワームホールというのは、離れた空間の間に空いている時空の歪のことだ。
ある種のブラックホールの一つで、ほとんどの場合シュバルツシルト面を有している。
当然光も離脱することができず、そもそも物質がその形状を保っていることは不可能だ。




