第04話 最強伝説-05 - ヤンキー戦
第04話 最強伝説-05 - ヤンキー戦
「ああっ! てめぇ、ギッタギタにしてやんぞ!」
スカル君がそんなことを言っている。主語が抜けているので、自分自身の運命を予言しているととれなくもないが。
おそらく俺に対して言っているのだろう。
「君達には無理だ。時間の無駄だからやめておけ」
きちんと忠告しておいてやる。
もちろん、俺が平和主義者であるということもあるが、だからと言って無抵抗主義者では断じてない。
フェイズ・シフトを行わずとも、彼らとの実力差は蟻と人間ほどもある。
そして、蟻とじゃれあったところで、俺にとって時間の浪費にしかならない。
「はぁ。舐めてんじゃねぇぞ、こらぁ」
スカル君が代わり映えのしないセリフを口にしている。
彼らの頭の中は空洞になっているのではないだろうか。
俺はそう思い始めた。
「君たちの知力では日本語が理解できない可能性もあるから、改めてもう一度だけ聞く。とがり耳の生……ではなくて、女を知らないか?」
このまま彼らと話いても時間だけが浪費されていくだけなので、最後の質問にするつもりで俺は聞いた。
すると、目の前のヤンキー君がまたエキサイトを始める。
「てぇんめぇ!」
言いながら、俺の胸元をつかもうとしてきた。
俺としては男に触られて喜ぶような趣味はないので、当然よける。
「な、なんだぁ?」
ヤンキー君は驚いている。俺の襟元をつかもうとしていた右手が空振りした理由がわからなかったらしい。
ということは、俺の動きが見えなかったということだ。
「なるほど、それが答えか。ならば、君たちに聞くことはないな。次は頭の中身が存在する相手に聞くことにするよ。それでは、じゃましたな」
この挨拶自体が無駄なような気もするが、一般ピーポーの俺としては礼儀だけは通しておいた。
「て、てめぇ、もしかして俺らがバカだっていってんのか? ざけんじゃねぇぞ、こらぁ!」
空振りしたヤンキー君は未だ自分の右手を見ている。そのかわりに盛り上がってきたのはスカル君だ。
俺にとってはもうどうでもいいことなので、もちろん無視するつもりだ。
スカル君が俺の左手に回って、動きを阻止しようとしているが、俺にとってはなんの障害にもならない。
道に犬の糞が落ちていた時と同じことで、避ければいいだけの話だからだ。
「おっ? えっ?」
スカル君も驚いている。特に早く動いたつもりはないのだが、俺の動きが見えなかったようだ。
「うやゃおおっ!」
ゴリラ君は意味不明な声を上げていきなり殴りかかってきた。
俺は背後に回って、派手に空振りをしようとしているゴリラ君の背中をそっと押してあげる。
すると、ゴリラ君はスカル君にぶつかり、さらにヤンキー君にぶつかって、三人は絡まり合ってアスファルトの上をゴロゴロと転がっていって動かなくなった。
限界ギリギリまで手加減したのだが、それでもやり過ぎたようだ。
三人は絡まったまま、ぴくんぴくんと痙攣しているので生きているのは間違いない。




