第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 16 - 勝敗
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 16 - 勝敗
距離をとった偽トラマンは気を高めると、急速に体長を縮めていく。
今のままだと、格闘戦では圧倒的に不利になる。
遠隔攻撃が通じないと判断して、肉弾戦で決着をつける。
そう判断したのだ。
俺は気を高めつつ待った。
フェイズ5の俺と、ほぼ互角でやりあえるとなると、偽トラマンはかなりの実力を持っていることになる。
待ち時間はほんの僅かだった。
一気に間合いがゼロになる。
至近距離から右膝を入れてきた。
俺はそれに左肘で合わせる。
膝と肘が激しくぶつかり合い、衝撃が周囲に空間を歪ませる。
これが格闘戦の開始の合図となる。
俺は左肘で膝を封じた流れでそのまま、偽トラマンの体に左肘を撃ち込もうとした。
偽トラマンはそこから更に間合いを詰め、俺の肘を交わす。
際どいところで、俺の攻撃はそれた。
もちろんそれだけではない。
俺の攻撃を交わすと同時に、偽トラマンは右の拳を見えない位置から放ってくる。
俺はその攻撃をかわさずに受ける。
強烈な打撃。目がくらみそうだ。
フェイズ5でこれだけのダメージを受けるのは本当に久々だった。
だが、致命傷ではない。
俺はダメージを負うのと引き換えに、ゼロ距離から内気を偽トラマンの体内に叩き込むことに成功した。
俺の右脇腹に拳をめり込ませた状態で、偽トラマンの動きが止まる。
金色の光を放っていた目が、輝きを失いかけるがギリギリのところで明滅していた。
どうやら成功したようだ。
致命傷になるかならないか、ギリギリの所を狙ったのだが、殺さずにすんだ。
これで、必要な情報を引き出すことが可能だ。
もちろんこいつに聞くわけではない。
話す保証はないし、そもそも話したところでそれが真実かどうかなど確かめる術がない。
そんな不確かな情報を得るより、もっと簡単でなおかつ確実な方法が存在している。
俺は、いったんライジンに戻るとコックピットに搭乗して、偽トラマンをマニピュレータで捕まえる。
「現在の状況を教えてくれ」
すぐに回線を開いて問いかける。
「小隊は現在、敵の戦闘機部隊と交戦中。二機撃墜したが、残り十機に追われている」
三対十というのは想像以上に厄介な状況である。
かろうじてパイロットの技量でしのいでいるが、簡単に覆せるような戦力差ではない。
とは言え、俺としても無茶を承知で頼むしかない。
「俺は単機で敵母艦に向かう。その間、なんとしてでも敵部隊をひきつけておいてくれ」
この空域には、かならず英雄がいるはずだ。




