第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 13 - 人力ハイパードライブ
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 13 - 人力ハイパードライブ
もっとも、空間を分離させた瞬間の時空振より、機体が受ける影響はずっと少ない。
加速は俺の気を使うことでいくらでもできるのだが、やりすぎると時空振が大きくなり過ぎて、到着直後に位置を特定される可能性が大きくなる。
加速を少なくすれば見つかる可能性はそれだけ減るが、今重要なのは到着するまでの時間だ。
俺一人ならば、完全なステルス状態で移動可能だが、タツギ三機とライジン一機を同時に運ぼうというのだ。
リスクが皆無になるというのはあまりに虫が良すぎる。
ただ、目的地からある程度距離をおいた位置から徐々に減速していくことで、時空振を極力少なくすることが可能となる。
それでも、この方法ができたのは、ひとえにライジンの基本スペックの高さゆえだ。
人体が耐えられないような機動でも無制限にできてしまう機体は、どれだけ無茶なことをやろうと壊れないことを前提としている。
搭載されているエンジンスペックを遥かに超える出力にも耐えられるようになっているのだ。
現に長時間に渡って俺の気を注ぎ込んでいても、壊れずに加速し続けている。
わかりやすく表現すると、四機のバリアブル機に戦艦クラスのエンジンを搭載して最大戦速で加速している状態だ。
さらに俺的ハイパードライブを使うことによって、数週間はかかる航行を24時間程度で行うことが可能となる。
実際に、往路は24時間で到達している。
すでに航路が分かっている復路なら、若干短い時間で到達できるだろう。
フェイズレベル次第で大きく変わるが、俺一人ならカップラーメンができるまでには往復可能だ。ただ、今はそんなことを考えたところでどうにもならない。
「ハイパードライブに入った。ここから24時間は何もすることがない。好きにしてくれ。俺は寝るから、脱落したら拾いにいけない。それだけは、気をつけてくれ。それと、静かにたのむ」
俺は接触回線を使って三人に伝えると、すぐに回線を切った。
こっちの宇宙に来てから、まともに寝る時間はほとんどとらなかった。
往路ではたっぷり寝たが、熟睡したわけではない。
俺が気の供給をやめたら、たちどころに通常航行に移行してしまうからだ。
もちろん、一番怖いのはフェイズ5の状態であることだ。
寝返り程度でも手加減なしにやってしまったら、ライジンだけでなく他の三機も消えてなくなる。
で、俺が寝ると言ったのは瞑想に近いやり方である。
意識を無に近い状態に保つ。




