第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 12 - 超航行
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 12 - 超航行
ゲイルは二人の話しにはまったく乗ることなく、冷静な声で報告してくる。
バリアブル機体の特徴を利用し、手足となるマニピュレータを使ってひとかたまりになっている。
なんのためかと言うと、俺が運ぶためだ。
いくら俺でも、バラバラの機体を一度に運ぶことは難しい。
だが、こうやって一塊になっていれば簡単に運ぶことができる。
準備が出来たところで、俺はいったんコックピットから抜け出し、安全距離でフェイズを5まで上げて再びコックピットに戻る。
壊さないように慎重に乗り込む必要があったが、馴れもあり特に問題なく搭乗することができた。
乗り込んだ後、再び回線を開き直すと小隊三人に通知する。
「対G制御全開に。3で出る」
俺が通知すると、すぐに了解したという応答が三人から返ってくる。
コックピットからライジンのメインスラスターに向かって、気の一部を流し込む。
すると、蹴飛ばされるように三機のタツギとライジンは加速を始める。
もちろん、対Gシステムが対応できる限界ギリギリのラインを狙っての加速だ。
本来ならこれがハイパードライブ航法へのイグニッションとなるのだが、俺がやろうとしているのはその先である。
スラスターに流す気を制御しながら、ライジンを中心にしてタツギ三機を包み込むように気を広げていく。
自分の気を広げることで、ある種のフィールドを形成するのだ。
フェイズ5の力があれば、このフィールドの中と外で空間を切り分けることが可能となる。
フィールドがちょうどよい大きさにまで広がったところで、中と外を断絶させる。
その瞬間、それまであったGが消えて無重力状態になった。
航行は続けているが、空間ごと移動をしているので、相対性効果が一切働かない状態となる。
これもある種のハイパードライブ航法であるが、特殊なゲート使って質量のみを別次元に逃がすやり方と違い、時空振という形で周囲に多大な影響がもたらされる。
その影響は多少ではあるが、中にも及びライジンの機体が奇妙なきしみ音を発している。
時空振の影響を受けているためであった。
フェイズ6なら瞬時に破壊されていたところだろうが、フェイズ5となのでライジンの機体はどうにか耐えることができていた。
ここからは切り分けた空間ごと、ライジンのエンジンによる加速に俺の気を乗せて加速させる。
Gはまったく感じないが、その代わりに加速させた空間は強烈な時空振を発生させることになる。




