第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 09 - 激変
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 09 - 激変
本当にナジュが求めていることがなんであるのかを承知の上で、俺はあえて告げる。
「うっ…………わかったよ…………」
ナジュは長めの間を挟み、つらそうな表情をしながら答える。
やはり、今のナジュは本当に言いたいことが言えなかったようだ。
俺はそのことに気が付かないふりをしたまま立ち上がると右手を差し出す。
すると、ナジュも立ち上がり、俺の右手を握り返してきた。
「じゃあな」
俺は余計なことは言わずに、短く別れの言葉だけを告げる。
「…………」
ナジュは何も言わず、いっこうに俺の手を放そうとはしなかったが、俺はあえてそのままにしておいた。
せめてもの別れだ。これくらいは好きにさせてやる。
だが、事態は一瞬で変化する。
まるで地震のような衝撃が建物全体を揺らせた後、鼓膜が破れそうな爆音と共に衝撃波がすべての窓を震わせる。
単なるガラスなら割れていたことだろう。
揺れが収まったところで、倒れないよう腕の中に抱きかかえていたナジュを開放してやる。
ナジュは名残惜しそうに俺の顔を見ていたが、もちろん俺は気づかないふりで対応する。
「何が起きたの?」
すぐにナジュが聞いてくる。
「事態が急変した。帝星への直接攻撃だ。俺が想定していたより、遥かに敵の対応が早い。別れるには、ちょうどいいタイミングだったということだ」
俺は簡単に説明すると、チロへと目を向ける。
「後は任せる。いいな?」
短い問に対して、
「はい」
まったく慌てた様子も見せずにチロが答えた。
想定より早かったが、想定外の出来事ではない。
そういうことである。
「達者でな」
俺は、その言葉だけを残すと外に飛び出す。
ナジュはまだなにかいいたさそうにしていたが、もちろん無視だ。
別れは済んでいる。
俺は大気圏外へと離脱しながら、帝星周辺の気を探る。
多数の気を感じるが、普段と何も変わったところはない。
帝星の裏側に回り込むと、そこにはまるで巨大な隕石でも落下したかのようなクレーターができていた。
だが、それだけだ。
巨大な質量が衝突したのなら、それでだけではすんだりはしない。
相当な犠牲者がでたのは間違いないだろうが、隕石落下なら地殻津波の後、岩石蒸気が発生して惑星全体へと広がり、生命が存在しえぬ灼熱の塊となる。
反物質爆弾の投下であっても、破滅的な影響は後に残る。
そういった影響が残らないこの攻撃は、明らかに気による攻撃の特徴であった。




