第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 04 - ナジュの仕事
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 04 - ナジュの仕事
問題なのはそのタイミングである。
使えるのは一度きり、一番効果的なタイミングで使う。
ただし、それはもう少し後のことで、状況によっては必要なくなる可能性もある。
「お前の端末を見せろ」
俺はナジュに向かって右手を伸ばしながら命令口調で話しかける。
「端末? あたい、そんなの持ってたっけ?」
予想通り、とぼけたことを言ってきた。
「ファーイースト・コーポレートで用意した端末があるだろう。どこにやった?」
名目上ではあるが、ナジュは現時点でソーグ帝国内における一、二を争うような投資ファンドに成長したファーイースト・コーポレートのCEOをやっている。
その実態は俺がやっているのだとしても、CEOとしての権限を持つのはあくまでナジュだ。
ファーイースト・コーポレートに関する情報は、すべてナジュの下にくるようになっている。当然、その情報へのアクセスツールも支給してある。
「うーん……」
ナジュは天井を見上げながら考え始める。
おそらく思い出しているのだろう。
しばらく待っていると、今度は腕組みしながら考え始める。
さらに待つと、今度はあろうことかナジュはこっくりこっくりと船を漕ぎ始めた。
堂々たる居眠りであった。
正直、俺としては頭にくるというよりは、やっぱりなという思いの方が強い。
下手に起こすよりも、このまま寝かしておいてやろう。
もちろん親切心からではなく、めんどくさいからだ。
さてどうした物かと考えていると、先にチロが答えを返してきた。
「僭越ながらご主人さま。その女の端末に送られてきた情報はすべて、わたくしの方で管理しておりました」
まぁなんというか、おみごととしか言いようがない。
「よくやった。俺の端末に……」
転送してくれと言おうと思ったのだが、すでに転送されていることに気がついて言うのをやめる。
チロならばこのくらいできて当たり前なのだが、最近あれこれ指示を出すことが多くてつい忘れてしまう。
送れられてきているメッセージを確認したところ、その殆どは貴族からばかりであった。
俺の、というよりファーイースト・コーポレートから融資を引き出したい連中がほとんどだが、帝宮爆破事件に関する質問も何割か混ざっている。
だが、俺が探しているのはそういったメッセージではない。
送信元にのみ注目して、俺は探しているので中身はどうでもいい。
メッセージが来ているのかどうか、可能性としては半々だと思っている。




