第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 03 - チロの仕事
第08話 宇宙英雄伝説04 英雄達の終焉編 - 03 - チロの仕事
「帝宮が爆破された事件で、翌朝すぐに内務府からロイ・ド・ワーク公爵が主犯となり実行された犯行であるとの公式見解がだされました。それを受けてワーク公が反発。自分の領地である星系に私有艦隊と共にこもり、内乱を覚悟で対立姿勢を強めている状況です」
その説明を聞いて、ようやく理解することができた。
というか、ナジュの説明を聞いてこれがわかったとしたなら、それはそれで怖い気がする。
「なるほど、スケープゴートを作ったか。英雄の凱旋に花を添えさせるつもりだな」
俺は話しながら帝宮で見た年老いた皇帝の顔を思い出していた。
このシナリオを書いている者がいるとしたなら、老帝以外には考えられない。
まぁ、俺としてはそこのところはどうでもいい。
問題なのは、この老帝に対抗できるような人物がソーグ帝国内に存在しないということだろう。
それは、権力的な意味ばかりではなく、謀略的な意味からもだ。
ここまでくれば、老獪というより妖怪めいて見える。
「それと、ご主人さま。送金の方はいかがなさいますか?」
椅子に座った俺の前に跪いたチロが俺に聞いてくる。
俺のための仕事をこなす一方、俺が頼んでいたラートラ共和国にある俺の口座への送金作業をやってくれていたのだ。
足がつかないように工夫し、さらに相場に極力影響しないように売り買いを調整しながらの作業なので、かなり神経を使う作業だったはずなのだが、そんな苦労はまったく表にださない。
「手間をかけた、もう必要はない。それと、俺が頼んでいたことだが、どうなった?」
さり気なく聞いたが、とんでもなく困難な任務であった。
成功していなかったとしても、俺はまったく責める気にはならない。
それでも、頼んだ限りは成否を明らかにしておく必要がある。
「それに関しては、ご主人さまの端末にすべての情報をお送りいたしております。ご確認ください」
俺はすぐに自分の端末を確認してみる。
ファイルを開くと、どれも間接的にではあるが、皇帝が爆破に関与した証拠が並べられていた。
「よくやった」
俺は確認しながら礼を言う。
チロは何も答えず、黙って頭を下げた。
こういう応対も完璧である。いささか過ぎるきらいはあるにしても。
さて、問題はこの後だ。
これだけの重要な情報、使い方次第では帝国そのものを吹き飛ばすきっかけにもなりかねない。
そして、俺の目的はそれではなかった。
これをどう使うかは、じつはもう決めてある。




