第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 55 - 末期の白ハク
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 55 - 末期の白ハク
そのまま大気圏を離脱すると、真っ直ぐラポへ向かう。
到着したのはビルの屋上を離れてから約3分後くらいであった。
特に急いだわけではないが、乗り物を使わずに移動したら、ゆっくりやってきてもこんなものである。
実際の所は、ほとんどエアロックが開くまでの待ち時間である。
中に入ると、真っ直ぐ管制室へと向かう。
そこに俺が選んだパイロット三人が待機しているはずである。
移動途中の通路だった。
近くからは人の気配は感じ取れない。
おそらく、このタイミングを狙ったのだろう。
眼の前の空間に、白いハクビシンがふわりと現れた。
無重力空間なので浮いてることには違和感はないが、ハクビシンであることには違和感がありまくる。
「警告するよ。君は危険を犯そうとしているよ」
甲高い声で俺に話しかけてくる。
「ようやくお出ましか。特に待っていたわけじゃないが、随分と親切じゃないか」
話したところで何も答えはしないだろうが、俺はあえて話しかける。
もちろん、目の前の白ハクに向かって話したわけではなく、その向こうから見ているやつに向かって話しかけたのだ。
「ここから先に進むと、君にペナルティがかかる可能性があるよ」
やはり白ハクは俺の言葉には一切反応を見せずに、紋切型の対応をしてくる。
もちろん、そんなことは最初から分かっていることだった。
俺が選んだパイロットの一人に英雄がいる。そのことを知って選んだから当然なのであるから、警告などされた所で意味がないわけなのだが、白ハクは関係なく警告を発してくる。
「好きにすればいい。これは貴様が初めたゲームだ。だが、そのゲームのルールに最後まで付き合うなどと約束した覚えはない」
俺は宣言しておく。
敵の正体を突き止めるために必要な情報は、ほぼすべて揃っている。
そろそろ最終局面に突入する頃合いだった。
「警告するよ。このまま進めば、君にペナルティがかかる可能性があるよ」
白ハクは同じような言葉を繰り返してきた。
敵も、俺に対して手間をかけるつもりが無くなってきているということだ。
敵は敵で状況は煮詰まりつつあると判断しているのだろう。
いずれにしても、これ以上白ハクと話したところで時間の無駄であった。
白ハクを無視して前に踏み出すと、触れる直前に白ハクはすっと消え失せる。
そのまま管制室に向かって進み中に入ると、パイロット三人がそれぞれの格好で待っていた。
俺が入ってきたことに気がついても、一人も反応しない。




