第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 54 - 出会いと別れ
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 54 - 出会いと別れ
「勘違いなさらないでください。私の自尊心などどうでもいいのです。……なぜ、私がこんな所でナルセをお待ちしていたと思います? あなたをこのまま行かせてしまうと、二度とあなたとお会いすることができなくなると思ったからです。だから最後に約束してください。また、会いに来てくだされると。もし、何か頂けるのであれば、その約束を私にして欲しい」
ナビリは美しいその瞳を、真っ直ぐ俺に向けてくる。怖くなるくらいに真っ直ぐだ。
正直俺は困っていた。
ナビリの言うことはまさしく正解だったからだ。
このまま宇宙に戻ったら、おそらく戻ってくるような機会はないだろうと思っていた。
ところがナビリはそれを読み切っていたのだ。
頭が良すぎるというのも考えものである。
おそらく適当な誤魔化しなど通用しないだろう。
もちろん、俺に向けられるその視線と言葉にならない所に含まれている言外の意味に気が付かないほど俺もヤボではない。
さらに、問題なのは俺がナビリに若干惹かれているという事実である。
なんだかんだ言っても、俺は頭の良い女が好きである。
ただそれはそれ、俺の真の野望に比べたら小さな問題だ。
夢のキャンパスライフ。
今度の人生こそ、若者である特権を謳歌するのだ。
「すまんな、その約束はできない。状況によっては変わる可能性はあるが。あまり期待しないでおいてくれ。今言えるのはそれだけだ」
俺は正直に話す。
相手がナビリでなければ、適当に約束したところで一向にかまわないのだが。
やはり俺は自分で思っているより、強く惹かれているのかもしれない。
彼女に。
「そうですか……。わかりました。自分でもおかしいとは思うのですが……。端末越しにあなたを見た一瞬で、強い想いが芽生えました。忘れることはできないと思いますが、でも何かで繋がっているのなら、また会えると信じてその時をお待ちしています」
ナビリは俺から一瞬たりとも視線をはずそうとはせずに言った。
さすがにこれ以上話をしていると、俺の方が辛くなってくるのでそろそろ切り上げることにする。
ラポへと戻るのだ。
「いずれにしても、そいつはもう君のものだ。好きにしてくれ。それでは俺は行く。じゃあな」
俺は返事を聞かずに足に力を込めると、天井をぶち抜かない程度の力で跳ねる。
ビルの屋上から百メートルほど離れたところで、気を制御して音速の壁を突破する。
ソニックブームが発生するが、さすがにこの距離なら下に影響が及ぶことはない。




