第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 53 - ナビリ
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 53 - ナビリ
「ナルセは、自分の力で空を飛ぶことがお出来になるのでしょう? それだけでなく、大気圏を突破することも、大気圏に再突入することも自分の力だけでおできになる。そうでなくては、これまでの行動に説明がつきませんから。だとしたら、ラポに戻るために一番便利な場所はここになります」
ナビリの推論は見事なものであった。とことん優秀な女である。
これほど優秀で、しかも美しい女性は俺が知っている中でも数えるほどしかいない。
直接会うのは、これが最後になるかも知れないというのはとても残念だ。
「流石だな。その通り。会わなかったそのまま行こうと思っていたのだが……これを渡しておくよ」
俺はソーグ帝国から持ってきた端末をナビリに渡す。ちなみに今は、ラートラ共和国で入手した端末を使っている。
「これはなんです?」
端末を受け取りながらナビリが訪ねてくる。
「そこには俺が最初に作った口座がある。資産を増やすための種銭にした口座だ。一定時間で随時振り込まれてくるが、最初に使っただけで放置しているから総額はパルテノ社の株式資産の倍程度になっているだろう」
振込元はソーグ帝国であり、俺がラートラ共和国での活動資金にするつもりで準備していたものだ。
「はい、それは理解いたしました。でも、これをいかがしろと?」
やはりリビィは理解してない。
「やるよ。それは、君のものだ。俺にはもう必要ないからな」
種銭から増えた金融資産は何千倍にも膨らんでいる。
俺としては、すでに活動資金は十分に足りていた。
迂回しているとは言え、ソーグ帝国からの送金なので使いづらいがリビィならばどうとでもできよう。
「このようなお金をもらう理由がありませんが?」
リビィはまったく喜ぶ様子もみせず、むしろ不満げにそう言ってきた。
「あって困るようなものでもないだろう?」
俺は俺で困惑気味に言ってみる。
「それはそうですが。礼をいただけるのなら、別な物にしていただけませんか? 私の仕事に対する対価ならばともかく、ただこのような物をいただいても少しも嬉しくありません」
なるほど、これは俺が判断を誤ったようだ。
リビィの有能さは余人を持って代えがたいレベルである。
そしてそのことに対して、リビィはプライドを持っているのだろう。
俺はそこのところをないがしろにしてしまった。
これは、反論の余地もなく俺が悪い。
「悪かった、申し訳ない。この通り謝罪する」
俺は一切申し開きすることなく頭を下げる。
すると。




