第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 49 - 民主主義と腐敗政治家
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 49 - 民主主義と腐敗政治家
ジョンはポケットから金属製の小瓶を取り出すと、一口飲んで俺の方へ向けてくる。酒だろう。
「飲むか?」
俺は手を振って断った。
これでも未成年だから……などというおためごかしではなく、フェイズ・シフト状態にある俺にとっては水と一緒だからだ。
今の俺が酔うことは絶対にない。
小瓶に入れてちびりちびりとやっている楽しみを、俺が無駄に飲むのは気の毒だ。
「そうか。それにしても、あんた、一体何者なんだ? いや、答えたくなけりゃそれでいいけどな。だが、夜中に会社立ち上げたと思ったら、朝には得体の知れない会社乗っ取って、昼には戦艦一隻沈めて、夕刻には大統領と直接取引までしてるなんざ悪い夢を見てるとしか思えんぜ、まったく」
今まで通信では何も話さなかったが、よっぽど腹に抱えたものがあったのだろう。そう言った後、また酒を一口あおっていた。
「聞かれたところで、私的な目的のために動いてる程度のことしか言えん。ただ、すべてが終わったら、パルテノ社の株はあんたにくれてやる。政治家にも繋がりができるから、せいぜい腐敗させてやってくれ」
さすがに高次元の存在がどうのこうのという説明をする気にはなれない。したところで、俺以外の知的生命体が関与できることではないからだ。そもそも、理解できるかどうかも疑わしい。
だから、いたって実利的な話に持っていく。
民主主義と腐敗した政治家はいわゆるコインの裏と表の関係だ。
どちらか片方だけでは存在しえないと言い換えてもいい。
民主主義というシステムが完璧に機能していれば、政治家の腐敗はなくなるはずだが、そうならないのは人間が完璧ではないからだ。
当たり前の話だが、腐敗を認めるわけにいかないのは腐敗した政治家だけになってしまうと、民主主義というシステムが成り立たなくなるからである。
結局の所、ほどよいところでバランスをとっていくしかない。
そこがおそらく民主主義というシステムの落とし所なのだろうと俺は思っている。
まぁ、この男に任せておけば、そうそう極端には動かないだろう。
「おいおい、正気か? あんた、とんでもないお宝を俺に丸々くれようってのかよ?」
今は雇われCEOとして思う存分辣腕を奮っているジョンであるが、それでも俺の提案には驚いている様子だった。




