第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 44 - 政治家と策謀
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 44 - 政治家と策謀
迂遠そうな言い回しだが、実際には直球そのものであった。
なにしろ、名指しで指名しているのだから。
もちろん、上院議長まで務める海千山千の男が、その程度のことなど気が付かないはずがない。
というか、政治家に話すにはあまりにあからさま過ぎる言い方である。
「そういうことか。まぁかまわんが、過大な期待はしないでおいてくれ。あくまで公正で公平な政治が私のポリシーだからな」
上院議長は俺の提案をさらりと流した。
公正さと公平さ。どちらも政治家から最も遠い概念だろう。だがそれを平然と言えるようでなくては、一流の政治家とは言えない。
そういうことである。
俺もそのくらいのことは承知しているので、そこはさらりと流しておいてさくっと実行ターンに入る。
「今のご回答、了承されたのだと解釈して、さっそく多少の政治献金をさせていただきました。お近づきの印です」
俺は端末を使って上院議長の口座に振り込むように指示をだしておいた。
もちろん、誰からも分からないようにいくつかの口座を経由して、複数の口座からの送金であった。
「わかった、後で確認しておこう。それより、本当に一人でいいのか? 失敗したりはせんだろうな?」
この期に及んでも、上院議長は信用できない様子であった。
まぁその判断は当然であるが、ここは納得してもらうしかない。
「そこは、この計画の大前提です。動かしようがない。どうせ、そちらはそちらで動くおつもりなのでしょうから、こちらの方は任せてください。それに、よくも悪くも長くかかるようなことはないでしょう。いい報告ができるように努力しますよ」
まぁ正直な話、俺がどんなに良さそうな計画を立てたとして、国家が俺一人に頼るようなリスキーな真似をするはずがない。
もし、そんな判断を下すようなら、その国家は終わっている。
「よし、わかった。この計画は君に一任しよう。すきにやってくれ。ただし、ラートラ政府は一切関与することはないし、情報提供以外のバックアップは期待しないで欲しい。それでいいな?」
最後の決断を大統領が下す。
「もちろんです、大統領。私に一時的な政府専用ネットワークへアクセスするためのアドミニストレータ特権を与えて貰えばそれで十分です。どの道、短期間での作戦になりますので、近い内にご報告できるでしょう」
俺は大統領の決定に合わせて、ここに来た最大の目的を告げる。




