第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 43 - 策謀
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 43 - 策謀
ウイリアムズ大将が食い気味に言ってくるが、大統領の顔には明らかな苛立ちの表情が浮かぶ。
「相手は下院議長だぞ? 明確な証拠もなしにそんなマネできるわけがないだろう。それより、インレグレード社に残されているデータからなんとか割り出せんものか?」
後半の言葉は俺に向けられたものだ。
丁度いいので、俺は自分の策を伝えておくことにする。
「サーバーに残されている全てのデータは提出いたしますが、肝心の座標は見当たりますまい。それが見つからない限り、彼らの計画が失敗したことにはならない。ナシム・ドルシマ下院議長が国会に出席していることこそがその証拠です。ですが、だからこそ手段はあります」
俺は提案を始める。
「手段とはなんだね?」
大統領は指で三回机を叩いた後そう聞いてくる。
「もうおわかりのようですね。パルテノ社が下院議長に接触します。彼らの弱みを握っていると思っている。そこで下院議長にこう持ちかける。ばらされたくなかったら、インレグレード社が行っていたすべての事業をパルテノ社に引き継がせるように、と」
もちろんこの策にはまだ続きがある。だが、全てを話さずとも、大統領はとっくに気がついていたはずなのだが。
「それで?」
大統領は先を促してきた。
分かっていてもわざわざ言葉にさせるあたり、やはり政治家であろう。
「その頼みを彼らは断れないでしょう。決定的な弱みがありますから。もちろん、素直にその提案に従うはずがない。かならず何処かでパルテノ社を排除しようとするはずだ。だがあなた方にとって、それで十分なはずです。背後に大統領閣下がいるのだと知られさえしなければ、彼らはギリギリまでパルテノ社を利用しようとする。その間に必要な情報を手に入れればいい。後のことは、そちらにお任せしますよ」
俺は結局最後まで説明した。
もちろん具体的なものではなかったが、今は方向性だけで十分である。
「それで、君の狙いは何かね? まさか見返りなしでやるというわけではあるまい?」
話し終えるとすぐ、そう訪ねてきたのはマシマ・クロウド上院議長であった。
この手の話しは必然的にダーティなものとなる。
だからこそ、大統領ではなく上院議長が話しかけて来たのだ。
「いえいえ。それほど難しいことではありませんよ。パルテノ社は現在、支援候補者を探しておりましてね。できれば、有力な議員を紹介していただきたいのです。たとえばそう……マシマ・クロウド上院議長のような」




