第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 38 - 軍拡へ
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 38 - 軍拡へ
徹底した情報統制が敷かれていたと考えるべきだろう。
その理由は簡単に推測できる。
俺だけでなく、多くの国民も似たような結論に到達している様子だからだ。
帝国領への侵攻である。
戦争をしたいのだと言うより、熱に浮かされているという感じである。
ただそれはほんの一部でしかなく、殆どの国民は無関心であった。
だからこそ、一部の主戦論者の声が大きく聞こえるようになっている。
おそらく帝国側でも似たような状況になっているだろう。
ただし、帝国の場合は国民の意見などどうでもよく、貴族の思惑によるものだ。
それに関しては俺も多少関与しているので、あまり他人事にはできない。
話しを共和国に戻すと、次の選挙を睨んだ動きになっている。
今は無関心である国民も、この話ばかりは無関心ではいられなくなるはずだ。
良くも悪くも戦争というのは国事行為であるからだ。
政府はこれから大々的にプロパガンダを初めて、帝国が侵攻してきて多くの国民の命を奪おうとしているというストーリーを流布するだろう。
戦争はすでに始まっており、国民心理の高揚も戦時行為の一つである。
それに合わせて法改正も進むことになるだろうが、それよりはやはり票だろう。すべてのストーリーはどうすれば票を集めることができるのか。それを最大化するために作られているのだろうと考えるのが普通である。
戦争もすべては票のためである。
今ネットワーク上の様子を見ていると、軍拡の流れは止められそうもない。
軍部が政府に全面的に協力したのは、その流れになることが都合がよかったからだ。
軍部にとっては戦争することが目的ではなく、軍拡そのものが目的である。
軍拡というのは予算の割当が拡大するということであり、それはつまり軍部に金が流れ込むということである。
同時に軍事関連の会社にも金が流れ込む。
軍の中枢にいる幹部連中の天下り先の拡大と、定年後にもらえる金もそれだけ拡大することになる。
実に資本主義国家らしい理由による主戦論であった。
もちろん、全てのつけは税金を収める国民と、前線に送り出される軍人が払うことになる。
ただ、俺としてはそこの所はどうでもいい。
ラートラ共和国がどういう歴史を辿ろうが、別の世界の人間である俺が責任を負うような問題ではない。
ただそれを俺の目的のために利用させてもらうだけのことである。
俺が買っていた株の価格は、最低でも二倍になっている。十倍近くになっているものもあった。




