第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 37 - 戦艦拿捕
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 37 - 戦艦拿捕
今更ながら聞いてみる。
「もちろんです、ナルセ様。私はイシス・ナビリ、秘書の他に金融の管理を任されております」
パルテノ社は今日実働し始めたばかりの会社だ。
一人で何役もこなせなければまともにやっていけないだろう。
おそらく本人が言った秘書や金融管理だけでなく、他にも色々と雑務をこなしているのだろう。
「わかった、よろしく頼む。さっそくだが、ジョンはいるか?」
俺はジョンへのつなぎを頼む。
「只今ジョンは外出しております。私で対応できることでしたら、お話をお聞きいたしますが?」
当然のようにナビリが言ってくる。
美しい顔には笑顔が浮かんだまま、表情がまったく変わっていない。
こういう対応は慣れているのだろう。
かつてどういう仕事をしてきたかはわからないが、様々な修羅場をくぐり抜けてきたのだろうことはその態度から透けて見える。
もちろん俺はそんなことなどおくびにも出さない。
「わかった。たった今インレグレード社は共和国軍の戦艦を一隻拿捕した。そのことで、すぐに軍関係の族議員と話しがしたい。出来る限り議会で力を持っている議員と繋いでもらえるか?」
俺は遠慮なく言う。
おそらくまだ誰もこのことは知らないはずだ。
拿捕した戦艦を利用して、議員とのつながりを作りたい。
こんなことが公になれば軍は窮地に立たされかねない。
軍としては絶対に内密にことを収めたいはずだ。
当然のことながら、軍関係の族議員としてはそれを受けて動くことになる。
この話しが耳に入れば、かならず議員は動く。自分の選挙に直結しかねないからだ。
「わかりました。少しお時間をください。折返し連絡します」
ここでナビリとの通信が切れる。
俺は端末から離れずにネットワーク上に流れているニュースを確認する。
すると、ニュースはクレアル海宙域駐留艦体帰還の話題一色になっていた。
突然クレアル海に出現した回廊と、回廊を使って侵攻を開始したソーグ帝国艦隊。それを阻止した英雄の出現。
それらが一つのストーリーとして全国民に流布されていた。
軍部からとっくに報告は政府に対して行われていたのだろうが、今後の方針がようやく定まったというところだろう。
流石に虚報は流せないとしても、自分達の支持率へと繋がるための物語をどう構築するのか検討を重ねていたのだ。
ここまで報告が遅くなったのはそのせいだ。
だが、情報が漏れることなくサプライズ的な政府発表となったのは、軍部による支援があったからだ。




