第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 36 - 勝利
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 36 - 勝利
さすがに戦艦の装甲だけに、簡単には切り開くことはできず何度か繰り返す必要はあったが特に問題はなかった。
切り開いた先には戦艦の動力である大きなメインエンジンが存在していた。
設計図を確認して、エンジンに縮退炉が使われていることは分かっている。
中心部にあるマイクロ・ブラックホールが存在しており制御システムが維持している。
制御システムを破壊した瞬間、マイクロ・ブラックホールはホーキング放射を起こし消滅してしまう。
そして、マイクロ・ブラックホールを失ったエンジンはもう動くことはない。
俺は確認することなく戦艦内部から離脱する。
巨体を動かすためのメインエンジンは失われたが、それで攻撃システムが沈黙したわけではない。
サブシステムに切り替わって攻撃は続いている。
この状態でなら、遠距離から小惑星でもぶつければ完全に轟沈させることも可能だが、それはやめておく。
裏で働いている力の証拠品そのものであり、こいつが残っていれば何かと役に立ってくれるからだ。
ひどく手間はかかったが、それからおおよそ三十分ほどかけて、戦艦のすべての砲塔をつぶしておいた。
設計図を照会しながら、完全に応戦能力を失ったことを確認すると俺はラポに引き上げる。
ライジン一機で戦闘機10機と戦艦一隻を落としたのだ。
さすがに機体はを超えていて、可動しているのが不思議なくらいだった。
俺が機体から降りるとガシム整備班長とその部下が整列して出迎えてくれた。
全員が敬礼している。
俺も見よう見真似で敬礼を返すと、ガシム整備班長がよってくる。
「たった一機でここまでやるとは思わなかった。とんでもない男だな、あんた」
ニヤっと笑いながら言ってくるが。
正直、俺にとってはたいしたことではないので、スルーしておくことにする。
「機体の整備を頼む。できれば、他の武装も使えるようにしておいてくれ」
俺はいたって普通の指示を出しておく。
特に他に言うこともなかった。
「ああ、まかせてくれ。完璧以上にしあげておく」
ガシム整備班長は敬礼しながら言ってきた。
俺は背を向けると、まっすぐ管制室に入る。
端末ではなく、管制室にある端末を使ってパルテノ社との回線を開く。
「ナルセ様。ご無事で」
出てきたのはむさ苦しいジョンの顔ではなく、美しい女性だった。
「ジョンの秘書だな。そう言えば名前を聞いてなかったな、聞いていいか?」
呼びかけようとして俺は名前を知らないことに気がついた。




