第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 29 - 離脱
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 29 - 離脱
「それと最後に、この場所は二度と使わないほうがいいだろう。わしは帝星に降りる。今後の連絡方法はわしの方で用意する。それまでには、今度のことにケリをつけてくれ」
男の声だった。結構いい判断をする。
もちろんすでに手遅れだが。
「わかりました。では、すぐにに動きます」
女の声でそう返答がある。
ここまでだ。
俺はいったんここから消えることにする。
来た道を逆にたどって閉鎖区画から外に出る。
もちろん誰にも見つからないように。
俺は閉鎖区画からある程度距離を取りながら、新たなターゲットの気を探る。
もちろん後をつけることが目的だった。
だが、長時間は無理だ。
すぐにでもラポに戦艦を送り込んでくるはずだ。
その男はまっすぐポートに向かっていた。
俺は気を捉えながら追い越し、先にポートの人混みに紛れ込む。
端末を使ってパルテノ社と回線を開く。
「ジョンはいるか?」
出た相手はジョン・マクレインではなかった。
初めてみる女である。美人だった。
「ナルセ様ですね? 少しお待ちください」
初めてみるというのに、遅滞なく判断してジョン・マクレインに繋ぐ。
「ナルセ。どうだ、いい女だろう」
自慢げにジョンが言う。
「秘書か? いいご身分だな。それより今からそっちに一人の男の映像を送る。深入りする必要はないから、この男の正体をさぐっておいてくれ。特に居場所は常時分かるようにたのむ。できるか?」
俺が探るように言うと。
「ふん。俺を誰だと思っている? それより、そっちは大丈夫か? ラポに向かう戦艦がいるぞ?」
さすがである。
俺が指示をだしていなくても、対応は問題なくやっているようだ。
「知ってるよ。それより、その戦艦に関する詳しいデータはひっぱれるか?」
まともに武装したライジンがあれば、おそらくなんとか対応できるが、詳しいデータが手に入ればラポへの被害をへらすことができるだろう。
「分かった。ちょうどそっち系の技術者をヘッドハンティングしてきたとこだ。すぐに必要なデータを送らせる」
もちろん人材を集めているのはそれだけではないはずだが、それにしても動きが早い。
この分なら数日とかかることなく、パルテノ社は本格的に立ち上がることだろう。
まぁそんな先のことなど今はどうでもいい。
ターゲットの気が近づいてきている。
端末のカメラを動かして問題なく撮影できることを確認する。
俺は自分から動くことなく、男が姿を現すのを待つ。
そんなに長いことではなかった。




