第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 14 - チュートリアル
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 14 - チュートリアル
管制室の反応から見ると特に気がついていない様子である。
もちろんそれはAIによるサポートがあったおかげであるが、おそらくそれが普通なのだろう。
ハッチの向こう側はバリアブル機用のエアロックになっており、機体が中に入るとすぐにハッチが閉まる。
「カタパルト装着と同時に射出する。舌を噛むなよ」
管制室からラッシュの声が届いてくる。
「了解」
俺は短く答えておく。
そういった作業はすべてオートでされるので、空いた時間を出来る限り操作の確認に回したかったのである。
だが、時間はわずかしか取れなかった。
カタパルトに載せられた足にロックがかかる振動が伝わってくるのとほぼ同時に機体は射出される。
全天スクリーンに写った光景は、一瞬でエアロック内から宇宙空間へと変化した。
俺は機体を人型から戦闘機に変形させ、バーニアを後部に集中させる。
すると機体はさらに加速する。
「そのままマップにある訓練場に向かってくれ」
通信が入るとスクリーンの一部にマップが表示されて、目的地が示される。
現在の進行方向から見ると九時の方向にあり、ほぼ直角に曲がる形になる。
俺は一瞬だけ人型に変形させると、方向転換した後また戦闘機に変更する。
まるでハンマーで殴られたようなGがかかり、自分自身の体重が重しとなってのしかかる。
俺にはどうということはないが、他の人間にとってはまるで話は違ってくる。
これだけのGの中で動けるようなになるには、筋力を鍛えたところで限界がある。
俺のように気を高め、自在に操ることが出来るような修練を積まなければならない。
正直それはパイロットではなく、武闘家の分野だ。
俺にとってはこの程度のGならフェィズシフトを使う必要もないが、そうでなければ意識を保っていられないだろう。
この時点で俺は、テスト・パイロットチームの連中が笑っていた理由に気がついた。
試験機とは言え、こんな機動制御を行うような機体。まともに操縦できる人間がそうそういるとは思えない。
ライジン型の機体がこれ1機しか製造されなかった理由はそれが理由だと考えて間違いない。
俺がテスト・パイロット連中に笑われたのは、最初からうまくいくなどとは思っていなかったのだ。
俺を試験すると言ったゼセトは最初から合格させるつもりはなかったということだ。
まぁ、どうでもかまわないのだが。
それより移動中に、姿勢制御を繰り返しながら操縦方法を確認していく。




