第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 12 - 試験
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 12 - 試験
正直、俺はこの二人はどうでもいい。
俺が最初に部屋に入ってきた瞬間から気になっていたのは、残る一人。小柄な男の方である。
笑顔も浮かべず、完全に無表情のまま俺を見ていた。
そこから何も感情のようなものは感じ取れない。
おそらく、この小柄な男がエースであろう。
「彼は、新たにテスト・パイロット候補として来たナルセだ。これからナルセには、ライジンに乗ってもらいラッシュと模擬戦をやってもらう」
ゼセトが発言すると、大柄な男と女の二人は驚いたような表情を見せる。
「いきなりライジンって大丈夫か? まぁ、俺はどうでもいいけどよ」
大柄な男が答える。
ライジンって言うのはここで試験されているプロトタイプの機体だろう。そして、大柄な男の名前はラッシュというらしい。
「ならしですこし使ってもらうさ。気が済んだところで、ラッシュとの模擬戦だ。それでいいだろう? いきなりテスト・パイロットになろうっていうだ。そのくらいのことは構わんよな?」
ゼセトは俺に向かって同意を求めてきた。
もちろんそんなことは、あくまで形式上の問題でしかない。
俺に拒否するという選択肢は用意されていないからである。
「わかった。機体を見せてくれ」
この先どう事態が展開しようと特に問題はないので、俺は同意しておく。
すると俺の顔を見て大柄なラッシュが声を立てずに笑っていた。
明らかに、何かを想像して楽しんでいるようである。
どうやらライジンという機体が曰く付きか何かなのかも知れない。
女も楽しそうにニヤついていたが、小柄な男はまったく笑わず俺を見ていた。
やはりこのチームの中で気を止めておくべき人物は、こいつだけのようだ。
「ラッシュ、案内してやれ」
チームリーダーのゼセトがラッシュに指示を出す。
「オッケーチーフ。候補生、ついてこい」
ラッシュは思いっきり上から目線で俺に言ってきた。
足元をうろついている蟻が何をしようと気にもならないように、ラッシュにどんな態度を取られようと気にならない。
俺は黙って後に続いた。
向かった先は格納庫である。
人型の機体が四機並んでいる。
そのうちの三機は同型機であったが、一つの機体だけが違う形をした機体であった。
俺はその一つだけ形の違う機体に案内される。
「ほれ、こいつが認証キーだ。好きに使え。戦いたくなったらいつでも連絡すればいい。もっとも、それまで無事でいられたらの話だがな」
言いながらラッシュは俺にカードを投げてよこす。




