第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 09 - CEOジョン・マクレイン
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 09 - CEOジョン・マクレイン
ラートラ共和国の商法では、少数特定株主持ち分比率が90パーセントを超えると自動的に上場廃止になる。
俺はこれを狙っていた。
上場廃止になれば、インレグレード社側の経営陣における株式防衛は事実上できなくなる。
俺はここまでやった所で、すぐに連絡をとる。
相手はパルテノ社のCEOジョン・マクレインである。
「やぁ、ジョン。俺はナルセだ。今パルテノ社は、インレグレード社に対してTOBを仕掛けている。現在、全株式の70パーセントを取得した。君には残り30パーセントのうち20パーセントをなんとしてでも取得して欲しい。買い付け価格も手段も問わない。レフトアの株式市場が開始されるまでの三時間以内にやってもらいたい」
俺はなんの前置きもなく一方的に言った。
もちろん、初対面の挨拶も抜きである。
「わかった、ナルセ。二時間以内に方を付ける。終わったらこちらから連絡する」
ジョン・マクレインはまるで慌てる様子もなく、それだけを答えて通話を切った。
間違いなく、俺がやった取引を見ていたのだ。
CEOの権限でそのくらいはできるし、俺が何をやりたいのかも気づいていたのだろう。
だから、俺が説明しなくても、すぐに察することができたのだ。
そのくらいの芸当ができないのでは、これから先パルテノ社のCEOは務まらない。
通話が切れると、ようやく朝を迎えた街に出る。
これから二時間で、やるべきことがある。
今はまだパルテノ社はペーパーカンパニーである。
それと、取り急ぎでいいので形のあるものにしなくてはならない。
まずはオフィスを見つけなくてはならないのだが、これはビルを一つ丸ごと買うつもりだ。
パルテノ社は良くも悪くも普通の会社ではないので、同居する会社が他にいるのは都合が悪い。
それともう一つ。
メインバンクが必要であった。
表の会社として活動をする以上、これは絶対に欠かすことができない。
俺の見込みが正しければ、今朝にはクレアル海から帰還してくる英雄のニュースが流れるはずだ。
そのニュースと一緒に回廊の存在も公表されるだろう。
そうなれば、直前に広く薄く投資した資産が何倍にも増える。
当然それはパルテノ社の株価も同じである。増えたパルテノ社の自己資本を使えば、どこかの銀行にメインバンクとなってもらうことは問題ないはずだ。
そこまで終われば後のことは、CEOであるジョンに投げてしまうつもりだ。社員の雇入れも含めてうまくやってくれるだろう。




