第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 05 - 再びラートラ共和国へ
第08話 宇宙英雄伝説03 民主主義とバリアブル戦闘機編 - 05 - 再びラートラ共和国へ
俺はどのような危険な状況に陥ろうと、かならずなんとか出来る。そのことが分かっていてなお、チロは俺のことを優先する。
結局俺がどれほど指摘したところで変えられるものではないので、俺自身がなんとかフォローするしかない。
一緒にいられたらの話だが。
そういうことで、今回もチロには負担をかけることになるが、頼む他ない。
ナジュに渡したのは、そのためのメモだ。
「目立たないようになんて、朝飯前だよ。あたいを誰だと思ってんのさ?」
一体どこからその自信が湧いてくるのか聞いてみたいものだが、あえて指摘したりはしない。
言った所で無駄なことだし、何より時間がない。
「それじゃ俺は行く。くれぐれもトラブルは避けてくれよ」
俺は窓の方へと歩きながら、最後の最後に釘をさしておく。
「くどいよ。それよりあんたこそ気をつけてな」
珍しくナジュは俺のことを気にかける言葉をよこしたが、俺はあえて答えずそのまま窓を開けて飛び出した。
フェイズ1で大気圏を突破して、そのまま段階的にシフトアップしアリメイル銀河を目指す。
ラートラ共和国の主星レフトアに到着したのは、ナジュと別れて三十分後だった。
クレアル海が存在する航路以外に航路が存在していないか、気をさぐりさぐり移動したので時間がかかってしまった。
結局そうそう簡単にはいかず、航路を発見することはできなかった。
元々偶然を期待するしかないような行動だったので、失敗したからといって特に問題があるわけではない。
俺は誰からも見つからないように、リタ区にある古いビルに入る。
一人の男と接触するためだ。
名前も知らず、顔も見たことはないが、鳥系の種族なので間違うことはないだろう。
それに、俺が視認できる距離まで接近したところで、端末に承認のコールが入ることになっている。
約束の待ち合わせ場所はこのビルの屋上。
移動はエレベーターではなく、階段を使うようにという指定だった。
もちろん俺を監視するためと、おそらくもう一つ……。
ビルを半分ほど登ったところで、端末に承認コールが入った。
何者かの気が階段から伸びる通路の方から近づいてくる。
俺が接触する予定になっていた男だと思って間違いないだろう。
つまり、屋上で落ち合うというのはダミーで、最初からこの階で待っていたのだ。
「へぇ? あんた、金持ちには見えねぇな?」
鳥頭の男の第一声はそれだった。




