第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 50 - 我が家の現状
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 50 - 我が家の現状
ご近所迷惑になってなければいいのだが。
「はい。ご主人さまが姿を消したことが分かったとたん、てんやわんやの状態になっています」
どうも、俺は連中を買いかぶりすぎていたようである。
子供ではないのだから、俺が姿を消したとしてもそれなりにやってくれるのではないかと思っていた。
「ご主人さまの置かれた状況がわからないうちは、何も伝えないほうが良いと思い彼女達には何も伝えておりませんので」
チロは補足するように付け加えた。
「余計な気は使わなくていい。宇宙そのものが無くなっていない限りどうとでもできる。まぁ本当は使いたくない手段だがな」
このセリフは、チロを安心させるためであったが、そもそも最初からその覚悟でやっている。
「申し訳ありません、ご主人さま」
チロは俺の横で頭を下げた。
結局チロは俺がなんと言おうが気を使うのだ。
この反応も当然分かっていたことなのだが、さすがに放置するほど俺は人でなしにはなれない。
なんだかんだ言っても、家のことはチロに丸投げしているような感じになってしまっているのだから。
俺は、それ以上このことに言及することなく、チロの頭に手を置いて、ぽんぽんと軽く二度ほど叩いてやった。
すると、チロは嬉しそうに笑った後、まるで子猫のように俺に擦り寄ってきた。
いつもなら鬱陶しいので突き放す所だが、今は好きにさせておく。
今回は、その程度の報酬を与えられるだけの働きを十分にしてくれた。
「それで、記録は?」
俺が尋ねると。
「あっ、すみません。肝心なものをお渡ししていませんでした」
チロは若干焦り気味にポケットから取り出したものを俺によこしてきた。
スマートフォンである。
俺はそれを受け取ると、電源を入れて中を確認してみる。
チロがスマートフォンの中には機密ファイルが置かれていた。
それを確認すると、俺は思わず唸ってしまっていた。
俺がどさくさに紛れて潜入したのは、ソーグ帝国の中枢である。
だが、チロが持ってきたこれは、それよりもなを深い所にあるソーグ帝国……いや、二つの銀河を結ぶ深淵であった。
おそらくではあるが、五百年という年月をかけて、ソーグ帝国とラートラ共和国という二つの器の底に溜まった澱そのものである。
もし、こんなものを持っている……というより、知られたことを悟られた瞬間そいつは闇に葬り去られるだろう。




