第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 47 - 離脱
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 47 - 離脱
そのことが、すなわち手書きのメモを使えば白ハクに情報を与えることなく連絡を取り合うことが可能であるという事実を証明していた。
それに、今ここに来たのは突発的な事件に起因する。
本来の計画では、帝星に到着するのを待って行動を起こすつもりであった。
だが、不確定要素が混じった以上、先に手を打っておく必要が生じたのだ。
元々、この宇宙に飛ばされた時から、事態は流動的に動いていた。
俺の計画通りに進まないことは、寧ろ俺にとっての想定通りと言っていいだろう。
もちろん、今この時点で最良の手を打ってはいるが、それが数時間後にはひっくり返っている可能性もある。
ただ、そうなっても良いように別な選択肢も用意してあるのだが。
何が正解なのか分からない以上、柔軟に対応するしかないということである。
それはともかく、この戦艦での用がすんだ俺は、すぐにこの場を離れる。
というのも、一時的にハイパードライブを強制解除させたが、全艦艇に問題がないことが確認され次第ハイパードライブに戻るはずだ。
そうなれば、簡単に出入りすることは不可能となる。
ハイパードライブ中外に脱出することは乗艦している艦艇そのものを破壊しない限り不可能だからだ。
さすがに俺もそこまではしたくない。
十数万隻からなる艦隊のハイパードライブを強制解除させたのも、そんなことをしたくなかったからだ。
俺は現時点で周囲に誰もいないエアロックを見つけると、そこから外へと脱出する。
エアロックが閉じた瞬間に、艦隊が一斉にハイパードライブに入っていく。
もし、普通に見ていたら瞬間的に消えたように見えただろうが、俺にはそれぞれの艦が超光速で動き出したことくらいは簡単に認識できる。
俺は艦隊と距離を取りつつフェイズを段階的に6まで上げた後、一気に追い抜いた。
艦隊運動をしている限り、最も低速の艦艇の巡航速度が上限となるので俺にとっては超低速航行に見える。
もちろん、フェイズ6の移動速度に追いつくことのできるハイパードライブ機関は理論上存在しないので、比べることそのものがナンセンスであるのだが。
俺は帝星にフェイズを落としながら接近し、全ての監視システムをすり抜けて地上に戻る。
フェイズシフトを解除した状態で地上に降り立った俺は、すぐに端末を使って連絡を入れる。
おそらくとっくに自室に戻っているはずであった。
「ナジュ、まだ起きてたか?」




