第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 42 - ルート権限
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 42 - ルート権限
投擲用の武器以外には携帯の光学迷彩と、小さなマイクロ端末がポケットの中に入っているのを見つけた。
俺はその両方を取り上げると、自分のポケットに入れる。
マイクロ端末は、防御システムへ侵入するためのハッキングツールだろう。
この中を調べればケルンがやろうとしていたことの証拠となる。
俺はケルンをそのまま放置すると、光学迷彩を使わせてもらう。
自分の体が消えたことを確認して、ケルンが目指していた場所である防御システムに入っていく。
光学迷彩など使わずとも、すでに中には人がいなかった。
とっくに逃げ出すか、ケルンに殺されているかのどっちかである。
俺は中に入ると防御システムにログインする。
IDは財務尚書ギルヴァン公爵のもので、パスワードは俺自身が持ち込んだハッキングツールに解読させる。
すでにIDは通っているので、パスワードのみなら、それほど時間はかからない。
俺の目の前で秘密の扉は開かれた。
とは言っても、この瞬間この場所では、なにもすることはなくなった。
ログインできた瞬間に、俺の持ってきたツールはルート権限を自動的に取得して、バックドアを仕込んだ後、侵入に関する全てのログを消去してログアウトを行ったからだ。
これで俺はいつどこにいても、帝星防御システムに侵入することが可能となった。
だが、肝心なことはそれではなく、統合作戦指揮システムを採用しているソーグ帝国艦隊の指揮システムにもアクセスできるということであった。
統合システムにルート権限でアクセスできるということは、そういうことであった。
というわけで、俺にはもうここにいる理由はなくなった。
だが引き上げる前に、後始末はしておく必要があるだろう。
とんでもない危険物であるケルンを拾って帰るつもりで、瓦礫で作ったアリーナに入ってみるとそこにはケルンの姿はなかった。
とてもではないが、自力で動けるような状態ではなかったはずだ。
そもそも、気も気配からもケルンに動きがあるとは分からなかった。
などと俺は理屈をこねまわしてみるが、結果の方は明らかであった。
ケルンに逃げられた。おそらく、それに手を貸したやつがいるのだ。
おそらく生き残っていた職員の中の誰かだろう。
ケルンに手を貸していた内通者がいたということだ。
とは言っても、今から後を追えばたぶん拘束することはできるだろう。
だが俺は放置することにする。




