第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 40 - ケルン再び
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 40 - ケルン再び
なぜなら、その瞬間俺の出足が止まったからだ。
一旦さらに後ろに下がり、気を最小限に絞り込んだ状態で、気配を消していた。
俺にもぼんやりとしか敵の動きがつかめなくなってしまった。
その状態で、敵は動き何事が起きたのかと見に来た職員達を次々に針を投げて殺しながら俺から遠ざかっていく。
俺はその後を追うが、はっきりと位置を特定できない以上、攻撃には移ることができない。
前みたいにサイキックを使ってくれたら、丸裸になったも同然で位置の特定はできるのだが、そんな簡単な相手ではなかった。
まるで、影そのものだ。そこにいることは分かっているのに、手出しすることができないでいる。
おそらく、これがヤツ本来の姿なのだろう。
とは言え、俺もこのまま手をこまねいているわけにはいかない。
だいたいとは言えどいることはわかっているのだ、だったらいられる場所の方を限定してしまえばいい。
俺は天井と壁を気砲を使って崩していく。
かなり荒っぽいやり方であるが、効果の方は確かであった。
俺とヤツの周り10メートルほどの小さなアリーナが出来上がる。
これで、もう直接対決以外の道はない。
「わかっていると思うが、俺を倒さない限りここからは逃げられないぞ、ケルン」
俺が名前を呼んでやると、乾いた笑い声が聞こえてきた。
それと共に、空中に人の姿がゆらりと現れ、すぐにヤツの姿が実体化する。
それは間違いなく、元ナールス伯爵夫人の家令だったケルンの姿であった。
「まいったな、これは。お見通しでしたか。ところで、どうしてわかったのです?」
苦笑を浮かべたまま、ケルンが訪ねてくる。
「そう難しい話しではないよ。あんたがなぜナールス伯爵夫人の家令をやっていたのかを考えれば、自ずと答えにたどり着く、その程度のことだ」
俺が言ってやると。
「その程度こと、ですか。恐ろしい人だ。やはりあなたには、何がなんでもここで死んでいただかなくてはなりませんね」
急に冷たい笑みを浮かべてケルンが言ってくる。
「いいのか? 光学迷彩外して、勝つ可能性なくなっちまうぞ?」
俺は俺で指摘してやる。
すると、
「逆ですよ。光学迷彩っていうのは便利なようで、色々と動きに制限がありましてね。本気で動けなくなってしまう。だから、サイキックなどという小手先の力に頼らざるを得ない。さすがに貴方相手に、そんな小手先の力で勝てるなどとは思っていませんから。これからは本気で相手させていただきます」




