第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 39 - 防衛施設
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 39 - 防衛施設
俺はすでに敵の気を探り当てているので、敵の位置を見失うようなことはない。
すでに地下へのエレベーターに乗っており、今は最下層にある防衛システムの置かれてある施設に向けて降下中である。
大量の死体が転がっていることはともかく、俺が侵入しても何の反応もないのは助かる。
なにしろ、先に侵入したヤツが警備の者達を全員殺してしまっているので、俺の行動を制約するような人間が誰もいない。
俺は下へと向かうエレベーターの扉をこじ開けると、そのまま下へと落下する。
そいつの目的がなんであるのかは知らないが、俺の目的のためには正直邪魔である。
一気に落下していくが自由落下なので、エレベーターが下につくまでに間に合わなかった。
そいつがエレベーターを降りて、外に出ると同時に力が使われたことが分かった。
気とは違う力がそいつから放たれて、エレベーターの外にいた職員と思しき者達の気が消えてゆく。おそらくというより、確実に次々と殺されているのだろう。
ちょうど半数ほどがやられた所で、俺はエレベーターの天井をぶち抜いて下に降りた。
わざと派手な音を立ててエレベーターの中に降りたので、そいつの動きが一瞬止まったことが分かった。
敵は依然として光学迷彩を使っている。姿が見えるわけではないので、あくまで敵の気の流れを察してだ。
不意をつく形になった俺は、気配を頼りに一気に間合いを詰める。
フェイズ1とは言っても、そこらの達人レベルでは対応できる速さではない。
これで決めるつもりで、左の拳を腹部の辺りめがけて打ち込んだ。
ところが、そいつの体は羽みたいに軽く手応えがない。
と思っていると、俺の拳の力を使って後ろに思いっきり跳ねていた。
「ちっ」
俺は舌打ちをする。
単なるサイキックではないだろうな、と思っていたがやはりそうだった。
これは、気功を使った技の一つ、軽気功と呼ばれるものだ。
どんなに強い力で放った攻撃も、暖簾に腕押しという諺の通り致命的なダメージを与えることはできない。
そして、そいつは離れながらサイキックを使ってきた。
頭にパワーを集中することで、相手の脳を破壊するつもりなのだ。
俺は気を放ってその力をかき消したが、それはフェイントであった。
拳を放った左手を振ると、壁にキンッという硬質の音と共に小さな針が突き刺さった。
二つの攻撃は俺には通用しなかったが、そいつにとってそれで構わなかった。




