第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 37 - テロ
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 37 - テロ
「今日はよくやってくれた。すまんが、このまま帰ってくれ」
俺は抱きかかえたナジュを下ろすとすぐに別れを告げる。
「なんか、派手なことになってるけど、大丈夫?」
心配そうにというよりは楽しそうにナジュが俺に話しかけてくる。
「たのむから、今日はこれで帰ってくれ。こんな状況で男爵夫人閣下に派手に動き回ってもらうと正直困る」
俺は今にも野次馬の中に入りたがっているナジュをどうにか説得する。
「まぁ、あんたがいなきゃ、こんなとこに来ることもなかったんだから。そのくらいのこと、あたいだってわかってるさ」
どこまで信じていいものかは別として、一応ナジュは俺の説得に応じてくれるみたいだった。
俺はすぐに衝撃波に巻き込まれて大破したリムジンの代わりを手配する。
「後、数分でリムジンがつく。治安維持部隊による検問くらいはあるだろうが、うまくやってくれ」
俺はそれだけ言い残すと、ナジュの返事を待つことなく直ぐに動き始める。
今この瞬間、帝宮全体が一時的に麻痺状態にある。
だが、治安維持部隊が乗り込んでくる以前に、帝宮は安定を取り戻すだろう。
その一瞬の時間が俺にとって重要であった。
爆発のあった場所を中心に、帝宮は阿鼻叫喚の状況になっている。
至近距離から爆風を受けた貴族の誰かが、ミンチになっているのが見えた。
まだそれを見た貴族達が、悲鳴を上げたり嘔吐したりしている。
さらに、騒ぎを聞きつけた帝宮の奥にいて無事だった貴族が駆けつけて来ては、収集のつかない状況をさらに悪化させていた。
もちろん俺はそんなことはどうでもいいので、この混乱の中で警備がほぼ停止してしまっている帝宮の中を奥へと進んでいく。
外はもちろんだが、状況がさっぱりつかめない中央付近ではさらに混乱は酷い状況になっている。
そのおかげで俺は誰にも見咎められずに、さらに奥へと進むことができた。
俺が目指しているのは、帝宮全体の危機管理と上空の防衛を一手に引き受けている、メインシステムが置かれている施設である。
接近するとちらほら死人が出てきた。
もちろん爆発に巻き込まれたわけではなく、貴族でもない。
全て警備を担当していた軍人である。
こんなことが起きていて、誰も気が付いていない状態があることなどありえないことである。
だが、今この瞬間だけは話が違う。




