第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 36 - 爆発
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 36 - 爆発
「おおそうですな。そういった事を含めて、今後のことを検討しなくては。英雄ともなれば、会って話したい貴族も沢山いるだろうし。……ああ、もちろん男爵夫人には特別にお時間をご用意いたしますとも」
英雄を個人的に色々利用できそうだと考えついたギルヴァン公爵は、けっこう楽しそうにナジュに対して応えた。
とりあえず、今日の所はここでおしまいだ。
今のギルヴァン公爵の言葉で、俺の目的は概ね果たすことができた。
文書にしたりとかいうような、確約が取れたわけではないが、今そんなことを切り出すのはただ単に怪しまれておしまいになるだけだ。
ここらが潮時だろう。
『ギルヴァン公爵閣下貴重なお時間を取らせていたたきありがとうございました。今日はお話できて光栄でしたわ。では、また今後共よしなに』
俺はナジュに挨拶をさせて、そのまま下がらせる。
そうしながら、それまで頑張ってギルヴァン公爵に会いにきている他の貴族を遠ざけてくれていたご婦人方に軽く頭を下げることで合図を送る。
ご婦人方から開放された貴族達が、徐々に財務尚書に群がっていく。
俺はナジュと共にリムジンへと乗り込む。
目標を達成したのだ、ボロが出ないうちに一刻も早くこの場を離れた方がいい。
リムジンが発車した瞬間、ナジュがはぁっと深い溜息をつく。
心の底から安堵した。そういった雰囲気であった。
だが、それも一瞬の時間に過ぎなかった。
俺が感知したのは、インパクトの瞬間であった。
それまで、まったく何も感じなかった。
突然きた衝撃波がリムジンを吹き飛ばそうとする一瞬前に、ナジュを抱いて気を放ち上空へと脱出する。
ナジュを抱えたまま下を見ると、帝宮の数カ所で爆煙が上がっていた。
その中の一つの爆発が、近くで起きたのである。
見る限り同時に爆発が起こったところを見ると、どうやら時限式の爆破装置を仕掛けたのだろうと思われる。
周到に計画されたテロ行為にも見えるが、そうでない可能性のほうが高い。
というのも、爆発が起こったのはいずれも車の乗降場所であり、もし本当に帝国中枢にインパクトを与えようと思ったらさっき皇帝も出席したいた瞬間を狙うべきであった。
そうしない理由は簡単で、狙いが別にあるからである。
もちろん俺はすぐに動く。
せっかくの機会だ、この状況を利用させてもらうことにする。
俺は気を探りながら、人目の付かない場所に降りる。




