第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 33 - 噂話
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 33 - 噂話
『あら? わたくしは、そのクレアル海に回廊ができたという噂を聞きましてよ? それが本当ならと思い、公開されていた権利を買い取りましたの』
実際、その噂はすでに貴族たちの間で蔓延している。
なにしろ、俺が一晩かけて貴族たちの間で広めて回ったのだから、当然である。
そして、その噂が単なる噂でないことはこの俺が一番知っている。
なにしろ回廊を創った張本人なのだから。
「ほう? どこで、その噂を聞きましたかな?」
まるで知らぬ体でギルヴァン公爵が言ってくる。
もちろん、知らぬはずがない。
これは単なる噂ではなく、真実そのものなのだから知らない方が遥かに問題である。
なのにそんな質問をしてくるということは、情報源に関してさぐりを入れてきたのだろう。
『あちこちからですわ、公爵閣下。ご婦人方や殿方とお会いする度に、一度はその話しがでますもの』
俺は、曖昧に答える。
だが、人の噂話とはそういうものだ。
それに具体的な名前が出るというのも逆に胡散臭い話しではある。
「ほう? それはいけませんな。このようなことで、うろたえて妙な行動にはしる者がでてこないとも限らないですからな」
ギルヴァン公爵は苦言を呈したが、反応としては至って型どおりのものだった。
これでは、直接会って話している意味がない。
俺は、少しゆさぶりを仕掛けてみることにする。
『あら? それは、わたくしのことですの?』
まずはそう切り出す。
「いえいえ、そうではありませんよ、男爵夫人。噂話に軽挙妄動して、帝国に対して不利益な行動を取るものが現れるやも知れない。そのことを懸念しておるのです」
まずここまでは、想定通りの反応だった。
要するにいかにも、というやり取りである。
『では、やはりこの噂は真実、そう考えてよろしいのですか?』
俺は今のやり取りの中から、一番コアとなる部分だけを取り出し突きつけてみせる。
すると、さすがにギルヴァン公爵の顔に苦笑が浮かんだ。
気の緩みとかいうわけでなく、後で真実が分かった時にも余計な言質をとられないように、官僚的な答弁をした結果に突っ込まれたのだ。
保身がかえって隙きを作ることになってしまった。
だから、苦笑が浮かんだのである。
「鋭いですな、男爵夫人。あまり大声では言えませんが、すでに一度大規模な艦隊戦は行われており、新たな艦隊と入れ替わるように前線にいた艦隊が戻ってくることになっています」




