第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 30 - ターゲット
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 30 - ターゲット
一体どこまで知っているのかは分からないが、無言の圧力を掛けてきているということなのだろう。
もっとも、俺はこれ以上皇帝に関わる気は一切ないので、そういった圧力はすべてスルーするつもりでいる。
なんにしても、皇帝の話しはそれでおしまいである。
次にマイクは貴族に渡り軽い挨拶の後、宴会が始まった。
すると、すぐに多くの貴族たちが一斉にこちらの方へと集まってくる。
目立つつもりはなかったのだが、皇帝の発した一言ですべての状況が一瞬で変化してしまった。
さすがにこの状況では、両脇にいるランドール子爵婦人とリゼロッタ男爵夫人の二人だけで乗り越えるのは不可能。
さっそくもしもの時のための保険が役に立った。
無声通信機でナジュに対して逐一指示を出す。
ナジュは忠実に俺の指示に従う。
性格的にどうのという話しではなく、単なるキャパオーバーを起こして、俺に丸投げしただけのことである。
もちろん、俺はその全てに対応しながら、今日この場に来た目的である人物の動向を探っていた。
動きがあったのは、皇帝が退出した後のことだ。
さすがに皇帝の前では、他の貴族たちも含めて派手な動きはできないようで、比較的大人しかったが、皇帝が退出した瞬間に会場の雰囲気が一変する。
あの妖怪に見られていたのでは、それも当然だろう。
だが、その重しが取れたとたんそれぞれの貴族が、自分の思惑に添って動き始める。
当然、俺も動く。
『席を立って、俺についてこい』
無声機を使い、俺はナジュに指示を出す。
俺が移動を始めると、ナジュは俺の後を追いかけてきた。
特に早く歩くことはしないが、あえてゆっくりと歩くようなこともしないので、中々いいレスポンスであるといえる。
人の中を縫うように歩いて、反対側のテーブルの後ろに回り込んだところで、俺は無声機を使ってナジュに話しかける。
『正面の席にいる、頭髪がなくて白い口ひげをたくわえた老人のことが分かるか?』
俺の質問に対して、ナジュは声で回答する代わりに小さく首を横に振る。
どうやら、周囲の目をそれなりに気にかけているみたいだ。
こう見えても一応成長はしているようであった。
『彼が財務尚書であるゼッペルグ・フォン・ギルヴァン公爵だ。実質的にソーグ帝国を支えている男と言っても過言じゃない』
俺はついにネタバレをする。




