第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 28 - 皇帝
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 28 - 皇帝
今日の晩餐会には、皇帝も出席する予定なので中央に近づくにつれて飛躍的に人の数が増えて、いちいち止まっていたら永遠にたどり着けなくなのるので、貴族であり招待を受けている限りにおいてはいちいち挨拶など不要であった。
晩餐会会場付近に着くと、会場となる中央ホールはまだ開場前であった。
中に入る前に、それぞれの端末に向かってメッセージが送信される。
それが入場許可であり、指定の席を示すものである。
ただ確認しなくても俺はすでに知っている。
三人のご婦人方の座席位置は、俺が金を積んで指定していたからだ。
ちなみに俺の席は会場のどこにもない。
執事には本来入場資格はないので、指定された席などあるはずがなかった。
とは言っても、席こそ用意できないものの、入場許可は降りている。
もちろん金の力である。
メッセージが一斉に送られた直後、入場が始まった。
俺は三人の先頭を歩き、指定された席へと案内する。
事前に間取りと共に座席の位置を確認済みなので迷うことはない。
全員が着席した所で、会場の中に荘厳な曲が流れ始める。
すると、一度着席した貴族全員が立ち上がって右手を胸の前に当てる。
ソーグ帝国における敬礼のポーズであった。
貴族全員がこんなことをする相手は一人しかいない。
会場の一番奥にある壇上に、一人の老人が現れた。
ソーグ帝国皇帝ラーギュルヌ・フォン・リーフラーデである。
今年で在位110年となり、このままいけば在位最長記録をまたも更新することになる。
こういう老人であるから、子供もその殆どは老人であり天寿をまっとうしたものも少なくない。
孫もいいとこ初老であり、ひ孫まできてようやく働き盛りの壮年世代となる。
そういう老人であるから、女の方は控え目かというとそんなこともなく、お気に入りの女性がいる。
つい最近までその席にはナールス伯爵夫人がいた。
実年齢は老人そのものであるが、中身はその年でなおまったく枯れてはおらずギトギトとした鈍い光を放っている。
見た目は老人というよりは、妖怪の類に近いだろう。
実際俺も色々と皇帝に関して調べてみたが、あまりに闇が深すぎてさすがの俺でも回避した方が無難そうだという結論に達した。
おそらく、ソーグ帝国を延々と継いできたリーフラーデ朝の、一番深い闇が実体化したのがこの老人なのだろうと思われる。




