第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 27 - 出迎え
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 27 - 出迎え
俺の使ったリムジンの他に二台のリムジンが停まっている。
乗っていたのが誰なのかはすでに把握している。
まぁ、打ち合わせ通りということであった。
降りてきたナジュに頭を下げながら、無声機を使って話しかける。
『そこに見えるのは東端の入り口、帝宮の東の外れだ。そこに立ってる二人の女性は覚えているよな?』
俺は無声機を使ったまま、簡単な説明をしながらナジュに確認してみる。
というのも、昨日一緒に役員契約をしてまわった際、俺とナジュはそこにいるご婦人二人と会っている。
俺がそういう質問をしたのは、どのくらいナジュの記憶の中に残っているのかを確かめたかったからだ。
そもそも俺は、ナジュと一緒に50人近くの貴族と会ったが、その中の一人でも覚えていてくれるなど思ってもみない。
『んっ? 誰?』
歩いて近づきながら、即座にナジュが答えてくれる。
ある意味期待通りだった。
「これはこれは、ランドール子爵婦人にリゼロッタ男爵夫人。今夜はどうぞよろしくお願いいたします」
俺は二人の名前をことさら強調しながら頭を下げる。
もちろん、ナジュに教えるためであった。
「今日も彼がおつきとは、羨ましいことですわ。レーゼン男爵夫人」
扇で微笑む口元を隠しながらランドール伯爵婦人が話しかけてくる。
「有能な上に、見目麗しい殿方にエスコートされて帝宮デビューされるなんていうご婦人、そうそういるものではないですわよ」
同じように微笑む口元を扇で隠しながら追従するように話しかけてきたのはリゼロッタ男爵夫人である。
油べっとりの食べ物でも食べたかのように、二人の口からつるつると追従が口をついてでてくる。
それと言うのもナールス伯爵夫人ほどではないが、この二人にもそれなりの役員報酬を口座に振り込んでおいたおかげである。
「それでは帝宮の案内、よろしくお願いいたします」
まずは俺が二人に向かって深々と頭をさげる。
下げながらナジュに無声機を使って指示をだす。
『よしなに、と言いながら頭を小さく下げろ』
ナジュは素直に俺の指示に従う。
「よしなに」
すると、ランドール子爵婦人が自分のスカートの端をちょんとつまんで答える。
「おまかせあれ」
俺とナジュは二人のご婦人に案内されるまま、巨大な帝宮の中を中央に向けて歩いていく。
途中で様々な人間とすれ違うが、晩餐会への出席が目的なので止まることなく進んでいく。




