第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 26 - 帝宮へ
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 26 - 帝宮へ
それに、社交の場における主役はご婦人方だ。男の俺では対応できない場面はかならず訪れる。
それに、俺は俺で動く必要があるので、ナジュにばかり手をかけておくことはできない。
もちろん、目の届く範囲から離れるつもりはないが、俺が対応できなくなる場面を想定しておく必要があった。
いずれにしても、この時のためにいくつもの保険を掛けてある。
そうこうしているうちに、車窓から見える光景が変化してきた。
大きな建物はなくなり、きっちりと管理された樹木が並んだ美しい風景になる。
帝宮の周囲を飾る最大であり最高の美しさを誇る庭園に入ったのだ。
だが、この庭園の規模は都市一つを丸々飲み込んでしまうくらい広大であり、車で到着するにもしばしの時間が必要であった。
庭園を走る車は俺達が乗っているリムジンだけではなく、外から帝宮を訪問しようという貴族たちもまた多くいるはずだった。
ただ、あまりに広大なためにめったに出会うことはなく、帝宮前に乗り付けたところでその内の何台かを見ることができれば幸運だというところである。
ことほど左様に帝宮そのものも巨大な建築物であった。
そして、帝宮だけでなくその敷地である庭園の上空も含めて、特別な許可がなくては飛行することは許可されない空域である。
もし仮に違反すれば警告なしに撃墜されることになる。
なので、貴族と言えども上空から訪問することは許されていなかった。
なにしろ帝宮は皇帝の住処なのだ、セキュリティはそれに相応しいものとなっている。
もちろん、俺から見ればあまりに形式化しすぎたために、すっかり形骸化してしまっているのだが。
その点は、俺も色々と利用できるので実にありがたい話しであるが。
そもそもなのだが、想定していた通りに事態が運ぶとは限らない。
なんにしても、今できることはここまでだ。
『さぁついたぞ』
俺は無声機を使ってナジュに話しかける。
『わかってるよ』
ナジュも同じように無声機を使って返答してきた。
これで、簡単にボロは出ないだろう。
帝宮入り口の前に停まった車から俺が先に降り、反対側へと回って車のドアを開ける。
自動でも開くのだが、貴族ともなればそれぞれの雇っている執事の役割となる。
俺がドアを開くと、ナジュが慣れない広いスカートの処理にもたつきながら降りてくる。
その間に俺は周囲の確認を行っていた。




