第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 24 - アドバイス
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 24 - アドバイス
「宮廷デビューと言っても、特別なことではない。銀河一つを領土とするソーグ帝国だ。貴族様と言っても、辺境に領地を持つ田舎貴族など珍しくもない。生まれてから一度も帝星を訪れたことのない貴族はいくらでもいる。そう言った貴族が帝宮を訪れることなど日常茶飯事だろう。つまり、宮廷デビューするような貴族は毎日のようにいるということだ。気を緩めろとは言わないが、緊張するようなことでもない。落ち着いて対応してくれ」
俺は簡単にアドバイスをしておく。
経験上、細かなマナーは違っても、宮廷にいるような貴族連中はだいたい似たような連中が集まっているものだ。
魔法技術が発達した世界においても、貴族制度を取っている世界ならそこの所は変わらない。
発展途上にある魔法世界でも同様だ。
違うのは、文化的に洗練されているかどうかくらいのものだろう。
昨日は50人もの貴族と対面した。
そこで概ね必要なマナー等の常識的な知識は身につけてている。
できれば俺だけでなく、ナジュにも期待したいところだが、それを宛にすると余計なリスクを抱え込むことになるのでやめておく。
「まーかせて、心配しなくていいよ。それよりさ、もしだよ。あたいが皇帝陛下に見初められて側室になれって言われたらどうすんのさ?」
まったく根拠を伴わない、溢れ出る自信に満ちた言葉を口にする。
「それはありえん。皇帝には会わんし会えん。貴族とはいえ、スクリーニングもやっていない人間と面会するなど、監督官庁である皇帝府の連中が許可するはずないだろう」
確かに愛妾もいるし、側室制度も存在している。
だが、その地位に登り詰めることができるのは、熾烈な競争を勝ち抜いた女だけだ。
皇帝が街中や宮廷で見初めて、いきなりお手つきとなるなどというのはこれほど発達した貴族世界においてはまずありえない。
リスクが高すぎるというのもあるが、なにより貴族自身が皇帝の直系となることのできる最大の利権を手放すはずがないからである。
そういうことも含めて、ナールス伯爵夫人が一筋縄ではいかない相手であることの証明であった。
物理的な戦いならともかく、宮廷闘争において自称海賊にすぎないナジュなどでは赤子のようなものだ。
ほっておいたら、あっという間に身ぐるみ剥がされて粗大ゴミのように破棄されるのがオチである。




