第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 22 - 準備
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 22 - 準備
最初はスヤスヤと寝ていたのだが、すぐに顔に赤みが差してきて苦しそうに体を動かし始めた。
ただし、それも長くは続かず、すぐにガバッと身を起こす。
「うわはっ……はぁはぁはぁ。し、しぬ。ガチで死んじゃう」
どうやらちゃんと起きることができたようだ。
俺はナジュをそのままベッドに残して、身支度を整える。
「はぁはぁはぁ……外、暗いけど?」
俺が身支度を整えていると、ナジュは苦情のように言ってくる。
「当然だろ。陽が落ちるのを待ってたんだからな」
俺は貴族の執事に相応しい背広に着替えながら、軽く答える。
「へぇ? なんで?」
ベッドの上でゴロゴロと転がりながらナジュが聞いてくる。
「今夜はレーゼン男爵夫人が帝宮の社交場にデビューする日だ。そのために必要な手配は済んでいるから、さっさと自分の部屋に戻って準備してくれ」
俺は突き放すように言った。
というのも、ナジュの部屋の前ではすでにスタイリストやら仕立て屋やらが待機しているはずなのだ。
俺の部屋に来てしまっているので、彼らを待たせることになっている。
「ええっ? 聞いてないよ?」
ナジュが言い返すと。
「当たり前だ。手配したのはお前さんが寝た後のことだ。そして、今起きた。話すような時間はどこにもなかったからな。だが、そんなことは関係ない。さっさと自分の部屋に戻って、言われた通りにやっていれば準備はすむ」
俺の話していることはたいして難しい話ではない。
「ええっ? でもさぁ……」
ナジュはなぜかグズっている。
「ベッドの上で転がってる暇があるなら、さっさと立ち上がって自分の部屋に戻ってくれ」
俺はナジュの事情など一切忖度することなく強めに言った。
「ふんっ。乙女心の分からないやつは、いつか天罰が当たるんだぞっ!」
ベッドの上で仁王立ちになった後、ナジュは俺をビシッと指差しながらそう言った。
天罰を与えるやつと実際に戦ったこともあるが、今はその話しはどうでもいい。
「はいはい。言いたいことを言って気が済んだら、さっさと自分の部屋に向かってくれ」
俺はナジュの言葉を軽く受け流しながら、要件だけを繰り返し伝える。
すると、ナジュはふくれっ面の見本のような顔をして見せた後、それ以上は何も言わずに素直に俺の指示に従った。
それから小一時間が過ぎた後、俺の部屋に戻ってきたナジュは見目麗しい貴族の女性へと変貌していた。
もちろん見た目だけであるが。




