第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 20 - 繰返し
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 20 - 繰返し
そのことに特に問題はないが、俺はあえて応えずそのまま部屋を出た。
家令であるケルンが俺たちに同行しなかったのは、ナールス伯爵夫人が止めたからであろう。
これから色々と大変そうだが、俺としてはどうでもいいことである。
それよりも問題なのは、この後である。
ナジュを連れて、一旦外に出ると来る時に使ったリムジンに乗り込む。
「この格好、見た目はいいけど疲れるよ」
乗った途端、スピーカーを通してナジュの愚痴が聞こえてくる。
「慣れてくれ。それに、今から24時間かけてこれを繰り返すぞ」
言ってなかったが、ナールス伯爵夫人との契約は皮切りに過ぎない。
ただし、一番厄介そうでネームバリューのある相手を最初に抱き込めば、この後の交渉がやりやすくなるので、ナールス伯爵夫人を最初にした。それが成功した以上、ここから後の手間はそれほどかからないだろう。
ただし、件数は多いが。
「ええっ? まぢ? 冗談じゃないよね?」
俺の話しを受けて、ナジュが聞いてくる。
「もちろん。ただ、しょせんは一日に過ぎない。過ぎてみればあっと言う間さ」
俺は気楽そうに言っておく。
もちろん、そんなものは方便である。
「ええっ……。まぢかよ……」
俺が気楽そうに言っても、ナジュは乗ってこなかった。
それも当然で、今この時点で疲れていることにはかわりがないのだから。
「終わったら、なんでも好きな願いを聞いてやるから。とりあえず、頑張ってくれ」
金銭的な充足は十分にしてやりはしたが、どんな状況であれ不満というものは生じるものだ。
ましてや、初めて経験するようなことを、ぶっつけで怒涛のようにやらせようというのだ、やる気を出させるには多少の飴玉は必要だろう。
「ホント? なんでも聞いてくれるの?」
ナジュは、お腹を空かせた子供並に、いきなり食いついてくる。
俺は、一応フォローを入れておくことにする。
「ああ。ただし常識の範疇で、なおかつ俺ができることに限る」
相手がナジュでなければ、空気というものを読んでくれるだろうが、不測の事態を想定して念押ししておく。
「あんた、何想像してんのさ。もちろん、あんたに頼むんだから、あんたに出来ることに決まってるだろ」
なんか、俺の不安を掻き立てるようなウキウキ感漂う声でナジュがスピーカー越しに答えた。
微妙な不安は残るものの、ひとまずはこれで良しとする。
というか、せざるを得ない。
なぜなら……。




