第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 16 - 条件提示
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 16 - 条件提示
正直俺が提案した額は、巨大企業の役員報酬に匹敵するほどの年俸だ。
半端な貴族などでは、簡単に出せるような金額ではない。
俺の具体的な提案を聞き、予め調査に当たらせていたケルンにそのことを確認した、そんなところだろう。
そのことは今この瞬間ではたんなる俺の推測にすぎないが、答えなどすぐにわかる。
「わかりましたわ。今聞いた限りにおいては、とても断れるような提案ではなさそうね。でも、まだ話しは半分でしかない。そちらが何を提示してくれるのかは聞きました。では、こちら側としては何を提示すればいいのかしら? 見返りに何を求めているのです?」
俺の推測が確信に変わった後、そのまますぐにナールス伯爵夫人が聞いてくる。
さすがに俺が慈善事業をしているわけではないことくらい分かっていたようだ。
もちろん、俺にとっての本題はここからだ。
「こちらの提案は二つ。まずは、ルグゲイル公爵閣下にレーゼン男爵夫人を紹介していただきたい。それが一つ目」
この提案は、もう少し後で宮廷での影響力を完全に失った後なら、おそらく叶わなかった提案だ。
だが、今なら……。
「分かりました、それならなんとかします。そして、もう一つは?」
ナールス伯爵夫人は即決で引き受けた後、すぐに先をうながす。
「次に、ナールス伯爵夫人には今一度帝宮内での影響力を取り戻していただきます。ただ、これまでとは違い貴方の美貌ではなく、金をバラ撒いてください。今の宮廷では、それが最大の武器となるでしょう」
俺は二つ目の提案を提示した。
するとナールス伯爵夫人はナジュではなく俺の顔をじっと見てくる。
気づいているのかも知れないが、正直そこはどうでもいい。
俺が形式を守っている限り、それが事実になるからである。
「要するに、あなた達の手駒になれということなのね?」
ナールス伯爵夫人は身も蓋もない言い方をしてくる。
俺がざっくばらんに話したから、それに合わせた言動をしてきたということである。
当然のことであるが、俺はその発言に対してフォローを入れる。
「あくまで、ファーイースト・コーポレートの顧問としての範囲内ですよ。そこは、お互いに良い関係を築きましょう」
にこやかに俺は言ったが、もちろんそんな言葉に意味はない。
そもそも、ファーイースト・コーポレートという会社自体がペーパーカンパニーなのである。
ようするに金融資産以外は実態のない幻であった。