第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 07 - シュナイダー
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 07 - シュナイダー
ナジュには伝えていないが、ここは老舗の洋服屋でファーイースト・コーポレートが買い取った傘下の会社の一つである。
なので、色々と融通が効くのだ。
外には一切漏れない形で、ナジュを本物の男爵夫人へと生まれ変わらせることも可能である。
ナジュのことは店の人間にすべて任せておけばいい。
俺の着替えはすでに準備ができおり、着替えるのにも手間はかからない。
とは言え、着替えは間際になってやるよりも、余裕をもってやっておく方がいいので俺は手近な店員を捕まえて案内してもらう。
一時間ほど過ぎた後、俺は支度が完了したとの報告を受けてナジュを迎えに行った。
「なかなかいいじゃないか」
ドレスアップしたナジュを見た、それが俺の第一声だった。
俺も目が見えないというわけではない。
元々の素材が良いことなど最初から分かっていた。
ただ、正直想定以上にドレスアップしたナジュは輝きを放っていた。
「へへんっ。そうだろ」
思いっきり自慢げにその場でくるっと回りながらナジュが言う。
「勘違いしないでくれ。お前に掛けた魔法はお前が話すと解けてしまう類のものだ。俺が許可する以外では、人前で絶対に話さないようにしてくれ」
調子に乗る前に俺は釘を刺しておく。
どんなに見てくれがよかろうが、しょせんハリボテに過ぎない。
「へいへい、あたしゃあ、あんたのお人形さんに徹するよ」
おもいっきりふてくされた様子でナジュが言った。
それでも、この役割が嫌だとか言い出さないのは、今着ている衣装がけっこう気に入っているからなのだろう。
俺としては、その方が助かるのでわざわざ指摘するようなことはない。
「それでは行くぞ」
俺はもう余計なことは言わずに、ナジュに必要なことだけを伝えた。
すると、ナジュは黙って大きく両手を広げる。まるで、何かを期待しているかのような表情で。
「何をやっている?」
俺が尋ねると。
「抱っこ」
ナジュは当然のように言った。
どうやら、一度やってやるとそれを当然だと思うタイプの女であるようだ。
「公式な場にいくのに、そんなことできるわけないだろう。下に車を用意した。それでいくんだ」
俺は常識というものを話して聞かせてやる。
「はぁ。つっまんないの」
またナジュはふてくされたが、俺がとっとと歩き始めると後をついてきた。