第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 05 - 準備
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 05 - 準備
おそらく、それが結果的に政治的にはいい影響を与えることになるだろう。
その英雄はおそらくまたすぐにでも、前線に投入されることになるはずだ。
というのも、今のクレアル海回廊は軍事的なホットスポットであり、この場所を確保した陣営が敵に対して圧倒的なアドバンテージを持つことができる。
そんな場所になったからである。
だが、俺としてはそれは困る。
というのも、ラートラ共和国側の英雄となったリン・コウネ准将が帰国してからどういう政治的判断を受けるのか確認していない以上、ソーグ帝国の英雄、すなわちコーグ・ド・ファリス准将にクレアル海回廊に行かれては一瞬で勝敗が決まってしまう可能性があった。
それは逆も然りなのだが、もし俺に軍事オプションに関与するとこのできるだけの政治的な影響力があれば、そこら辺りの調整はうまくできるだろう。
何も、ソーグ帝国、ラートラ共和国双方に影響力を持つ必要はない。
もちろん、今の時点限定での話しであるが。
ということで、簡単な説明だけをしてから、男爵夫人になったばかりのナジュを連れて取っ掛かりとなる一人の貴族の下を訪れようとしていた。
「それで、あたいにどうしろって?」
ナジュが俺に聞いてくる。
「まずは、その格好からだな。今のままでは全宇宙アンケートをとっても、お前さんが男爵夫人に見えるという回答は一つもないだろう」
今ナジュが着ているのは、上から下まで黒ずくめの作業服めいた格好である。
イマイチどころか、自称ではあるが海賊目線から見てもかなりダサイ。
俺だとてファッションセンスがあるわけではないが、それでもナジュの服装がダサイことだけははっきりと断言できるほどのダサさであった。
というわけで、俺はナジュにそれなりの男爵夫人に見えるだけの服装を身につけさせる必要があった。
「はぁ? このままじゃダメか? 動きやすいし、この服お気に入りなんだけど」
さっそくナジュがゴネる。
「お気に入りかどうかなんて俺は知らん。はっきり言おう。その格好はありえない。これから先、その服は二度と着るな」
俺は宣言するように言う。
すると。
「ええっ? なんだよそれ、聞いてないよ!」
なんだかナジュは驚いていた。
「今、初めて話したからな。それよりすぐに行くぞ。強制的に連れていくこともできるが、自分の足でついてくるこもできる。どっちがいい?」
ナジュの驚きを軽く流して、究極の選択を迫る。