第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 04 - 設定
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「あたいが、エルなんとか・フォン・なんとか男爵夫人……。ファーなんとかのCEO。そんで、貴族に会えって言われても、あたい何がなんだかよく分かんないって」
なんとかがかなり多目ではあるが、とりあえず受け入れてはくれたようだ。
ただ、さすがにこのままでは物の役に立たないので訂正は入れておく。
ナジュのやるべき役割としてはハリボテにすぎないが、せめて立っていてくれなくてはハリボテの役割も果たせなくなる。
「エルフリーデ・フォン・レーゼン男爵夫人、ファーイースト・コーポレート。この二つに関してはしっかり覚えておいてくれ」
他にも言いたいことは山ほどあるが、俺は最も核心的に重要な部分のみを指摘しておく。
というのも、これからソーグ帝国内で行う活動は非常に政治的な闘いになる。
それは、ナジュがこれまでに経験してこなかった闘いだ。
ナジュの性格を考えれば、おそらく不得手な闘いになるだろう。
宇宙船を自分の手足のように扱えても、底なし沼のような貴族達の政権闘争の中では身動きすらできないまま沈んでいくことになる。
もちろん俺がいる以上、そんなことにはならないが。
だからと言って、わざわざ自分の足に重りをつけるようなことはしたくないので、こうして説明をしている。
高次元の連中が勝手に作ったルールではあるが、ナジュとペアになった以上得手不得手は関係なく付き合っていかなくてはならない。
「エルフリーデ・フォン・レーゼン男爵夫人。ファーイースト・コーポレート。エルフリーデ・フォン・レーゼン男爵夫人。ファーイースト・コーポレート。よし、覚えた!」
ナジュは何度か繰り返した後喜んで宣言する。
そんなに自慢するようなことではないし、不安も感じるがわざわざテンションを下げる必要もない。
「頼む。それで、さっそくだが、一人会ってもらう必要がある」
俺はここでようやく本題に入った。
これから極めて短時間で、ソーグ帝国における権力の中枢に食い込む必要がある。
クレアル海回廊における海戦で、一人の英雄が誕生した。
回廊を作ったのも俺だし、英雄を誕生させるために色々とやったのも俺だが、バレることはまずないのでここは他人事として考える。
その英雄がもうじき凱旋してくる。
かなりの戦果を上げたが、最後の最後で敵の反撃を受けて完勝とまではいかなかった。