第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 03 - レーゼン男爵夫人
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 03 - レーゼン男爵夫人
ナジュは俺がその間何をやっていたのか全く知らない。
もちろん、俺が一切告げていなかったからである。
だから、俺はナジュに向かって、同じことを繰り返し告げる。
「君にはファーイースト・コーポレートのCEOになってもらう。それと同時に、表向き名前も変わることになる。今日から君はエルフリーデ・フォン・レーゼン男爵夫人だ。もちろん、今現在誰かと結婚しているわけではないので心配しなくていい」
告げたのは結果だけだが、俺が何をやったのかなどナジュが知っておく必要は無いので話すつもりはない。
「どゆこと?」
やはり混乱したままの様子であったが、それでもどうにかナジュは立ち直ったらしく、ひどく大雑把に聞いてくる。
もちろん、俺は聞かれなくても説明するつもりだった。
これから先、ナジュにやってもらわなくてはならないことが色々とあるからだ。
「君の今の身分は海賊などではなく、ソーグ帝国の男爵閣下だ。今までの君の経は、今日限り全て抹消する。君は一般市民ではないし、ましてや何処の骨とも分からない海賊などではけしてない。栄光ある男爵家の家督を正式に受け継いだレーゼン男爵夫人が今の君だ。そして、レーゼン男爵夫人である君にはファーイースト・コーポレートのCEOに就任してもらう。もちろん、名義だけだからとりあえず余計な心配はする必要はない。ただし、これから君にはレーゼン男爵夫人として貴族社会の社交の場に出てもらう必要がでてくる。そのために必要な最低限度の立ち居振る舞いを身に着けてもらう必要がある」
どこまで理解して貰えるかは別として、俺はまず必要最低限のことを一通りナジュに話しておく。
「えーっと……どゆこと?」
完全に魂が抜けたようになっていた状態から復帰してきたナジュは、すぐにボールを投げ返してきた。
もちろんその理由は理解できていないからである。
そうだろうな、と思いながら説明していたので、想定通りの反応だ。
俺はこのまま説明を続ける。
「とりあえず、三つだけ覚えておいてくれ。一つ目は君は今日からエルフリーデ・フォン・レーゼン男爵夫人になった。二つ目はレーゼン男爵夫人はファーイースト・コーポレートのCEOである。三つ目はレーゼン男爵夫人はこれから頻繁に貴族達と会うことになる。とりあえず、それだけ頭に入れておいてくれ」
極限まで余計な表現を削り取って、同じことをもう一度説明してやる。