第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 01 - ファーイースト・コーポレート
第08話 宇宙英雄伝説02 ソーグ帝国政争編 - 01 - ファーイースト・コーポレート
ソーグ帝国内に活動拠点を作ることは予想していた通り簡単であった。
いかなる国家だろうが、腐敗しない国家は存在しない。
しかも、貴族制度に寄って立つような国家ならばなおさらである。
自浄作用というものが、権力闘争以外では働かないからだ。
ソーグ帝国の歴史の概要は簡単には詰め込んできたが、現在の帝国は明らかに末期的な状態にあることは確信できていた。
もちろん、俺が知ることが出来るのは、データとしての概要から想定することだけであった。
実際に、入手した金や白金といった希少金属を換金するための交渉において、地下組織との関係も持つことになりその段階で俺の想定は確信に変わっていた。
ソーグ帝国の行く末という意味ではとてもいい状況とは呼べなかったが、俺にとっては実に活動し易い環境が整っていた。
正確には俺とナジュにとってだが、最終的な目標には明確なズレがあるので、あえてここは一人称で表現しておく。
それはともかくとして、俺はソーグ帝国領内に入って二日で、帝星ファランシールのあるリヴァール星系内に拠点を作り上げることに成功した。
それはファーイースト・コーポレートという名称の企業団体で、リヴァール星系第五惑星リッシュの衛星軌道に作られたコロニーに本拠地を置く。
もちろん、そんなものに実態は存在しない。足のつきにくそうな休眠会社を幾つか買収して、急造した複合企業である。
実態はないものの、資本規模はそれなりであり、書類上だけで見れば中堅クラスの企業に見える。
もちろん、帝星内に作らなかったのは足を付きにくくするだめであった。
莫大な量の希少金属を隠しておく場所の確保と、そのほんの一部を資本金として金融資産を動かしていくための会社が必要となる。そのための拠点でありダミー企業であった。
その辺りのことは、俺とナジュの二人でどうとでもなる。
だが、問題なのは、有力貴族への接触であった。
ソーグ帝国内で何をするにしても、政治力を得るためには貴族の力が必要である。
さすが一つの銀河を支配するほどの巨大帝国である。優秀な官僚も存在するが、その人事を握っているのは貴族であった。
帝国において、貴族が世襲で実権を握り続けていることができるのも、すべてそのおかげといえる。
俺の目的にとっては、政治的な働きかけには絶対的に必要になる。なので、一番手っ取り早い方法は貴族の身分を金で買うことである。
随分と間が空いてしまいました。
ソーグ帝国政争編の終わりまで、なるだけ一気に連載していくつもりです。
お付き合いいただけたらありがたいです。